チベットの光 (5) 悲劇の始まり
叔父はまくしたてるなり、傍らにあった馬具用の鞭をとってウェンシーの母親を打ち据え始めた。妹のプダは驚き、ウェンシーと抱き合って傍らで震えていた。叔父は、打ち据え終えてもまだ気が収まらないのか、全身を震えさせながら、衣服の袖でウェンシー兄妹をはたいて怒鳴った。
チベットの光 (3) 人情酷薄
叔父夫婦の支持者は多く、ウェンシー親子はそれに勝てず、彼らの提案を受け入れるしかなかった。しかし、親子三人は財産がとりあげられてからは、爪に火をともすような生活が始まるとは想像もしなかった。
チベットの光 (4) 家財の返還拒否
そして、母は叔父と叔母、親戚、友人、隣人などを大きな客間に招いて盛大な宴席をもうけた。客人が席につくと、母はすっくと立ち上がり重々しく口を開いた。「今日は、息子ウェンシーが十五歳になる誕生日です。
チベットの光 (2) 餓えと寒さ
父親の死後、ウェンシーとその妹のプダの生活はままならなくなった。彼らは、夏の間は畑で過酷な労働に耐え、耕作のできない冬になると叔母の羊毛織りを手伝って、市場に売りに出かけた。
チベットの光 (1)
チベットの片田舎、シャアツェ地方と呼ばれるところには、美しく豊かな畑が広がっていた。その畑の中では、七~八歳ぐらいの少年が働いていた。
チベットの光(序文)
人生で重要なものは何であろうか。幸福(happiness)こそが重要である。しかしながら、わたしたちはこの問題を解決できていない。では、いったい何がわたしたちに幸福を感じさせてくれるのであろうか。
チベットの光 (84) ミラレパの遺品
【大紀元日本1月24日】弟子たちは、ミラレパがすでにあの世に逝ってしまい、舎利子が得られなかったことを嘆いて泣き叫び、哀しみの中で祈った。このとき、彼らは突如として空中から尊者の声を聴いた。 「弟子た
チベットの光 (83) 舎利子
【大紀元日本1月17日】あくる日の早朝、ラティンバが目を覚ますと、多くの空行母が天上の各種の珍しい宝物を携えてきて祭壇に入れ、尊者を供養しているのが見えた。しばらくして、ラティンバは五体の主要な空行母
チベットの光 (82) 辞世の歌
【大紀元日本1月10日】 ラティンバはすぐに尊者の面前に駆け寄って抱きついて泣いた。弟子や施主たちが祭壇の周りを囲み、尊者の遺体はまだ倒れずに、八葉の蓮華の形をした炎の中で座っていた。尊者は、右手で説
チベットの光 (81) 復活
【大紀元日本1月3日】「ああ!」ラティンバはこれを聴くと、心には刀で切られたような痛みが走り、全力で尊者が涅槃に入った洞窟に向かった。彼がチューバ地方の宝塔の形をした平地に到着すると、面前に師父が出現
チベットの光 (80) ラティンバの帰郷
【大紀元日本12月27日】ある夜、ラティンバがロウォロタ寺で修行していると、チューバ地方がまばゆいばかりの光に包まれているのが見えた。彼が目を凝らして見ると、山中でさんさんと光を放つ水晶宝塔が出現して
チベットの光 (79) 神秘現象
【大紀元日本12月20日】知らぬ間に、虹の間から巨大な蓮華の花が出現していた。さらに蓮華の花の上には七色極彩色の透明な壇城が出現し、強烈な光を発する壇城のてっぺんには、金色に輝く色とりどりの彩雲があっ
チベットの光 (78) 涅槃入定
【大紀元日本12月13日】このとき、空中に突如として色鮮やかな虹が掛り、天から細かな花びらがひらひらと舞い落ちて来た。ミラレパの弟子たちは、これらの形象を見て師父の最期が近いことを悟り、尊者に尋ねた。
チベットの光 (77) 博士の得度
【大紀元日本12月6日】このとき、尊者の病状は一時よくなったかのように見えた。 ツァアプはこのとき怪訝には思わず、却ってこう考えた。「これは人の目を欺くもので、俺は騙されないぞ。奴の化けの皮をはがさな
チベットの光 (76) 仏法神通
【大紀元日本11月29日】しばらくして、ミラレパは重篤のようになって、床に臥せるようになった。ツァアプは得意満面となり、心の中で思った。「は!何が神通だ。知識のない村民や頭の悪い女しか信じないさ。皆は
チベットの光 (75) 済度
【大紀元日本11月22日】女はツァアプの話を聞くと、ワクワクしてきた。彼の元に嫁に行くことができれば、名誉と地位を手に入れることができ、しかもツァアプが持っている莫大な財産まで自由にできるのだ。女は名
チベットの光 (74) 毒入りチベット・バター
【大紀元日本11月15日】ツァアプはこれを聞くと怒りが爆発しそうになった。しかし、周囲の人たちの手前、彼は怒りを飲みこむしかなかった。彼は沈黙を守っていたが、動揺を隠すことはできず、はらわたは煮えくり
チベットの光 (73) 学者の嫉妬
【大紀元日本11月8日】ティンリ地方にツァアオプ博士という学者がいた。この学者は心根が貧しく、金に目がなかった。しかし、彼は学者であったために、地元の住民は彼を尊敬し、宴会を催す時はいつも彼を招き、上
チベットの光 (72) 如何にしたら勇猛精進できるのか
【大紀元日本11月1日】この時、チベットで盛大な法会が開かれ、尊者の多くの弟子たちもこの法会に参加していた。高弟のラチンバは、その前日に夢を見た。夢の中で天神たちがミラレパにその一生の故事を語らせてい
チベットの光 (71) 尊者の名望
【大紀元日本10月25日】叔母を済度した後、ミラレパは師父のマルバと空行母が、あちこちの名山の洞窟で修行するように告げる夢を何度も見た。彼はその後、20か所余りの洞窟で修行し、最後には「これ以上修める
チベットの光 (70) 叔母の慈悲
【大紀元日本10月18日】このとき、プダは崖の外にいたが、遠くから叔母がやってくるのを見ると、急いで洞窟に戻り、叫んだ。「お兄ちゃん!お兄ちゃん!叔母さんがやってくるわよ。あいつには、わたしたち酷い目
チベットの光 (69) 人生無常
【大紀元日本10月11日】「お兄さんの言っている世間の八法とは、人間の幸福のことなのよ!」 プダが血相を変えて反駁した。「わたしたち兄妹が、世間の幸福を捨てることはないわよ。あなたは、バリ・ラマ大先生
チベットの光 (68) 妹の世俗的な考え
【大紀元日本10月4日】プダがその法会でミラレパの消息を聞いて廻ると、ある人が彼はチプにいると告げた。彼女がチプに行ってみると、太陽窟でミラレパを見つけ、すぐさま彼に言い寄った。 「お兄さん!自分のや
チベットの光 (67) 世の中で最も幸福な人とは
【大紀元日本9月27日】ミラレパは簡単に、これまで自分がやってきた修行について彼に話した。彼は聴き終わった後に嘆いた。「君のような修行方法は、実際稀に見るものだし、難しいことだよ。どうだい、俺たちと一