【大紀元日本4月14日】インターネット検索事業における世界最大手の米国グーグルが、3月22日、中国からの撤退を発表し、世界的に大きな波紋を呼んだ。中国国内のネットユーザーがグーグルで検索した情報に中国共産党当局がフィルタリング(検閲)をかけることに、米国グーグルが抗議の意を示したものだが、約4億人のネット利用者がいると言われ、世界最大のネット市場である中国から撤退することは、同社にとって多大な損失を伴う。それでもなお同社が中国からの撤退を決意した理由について、米国シリコンバレーで長年ネット検索技術の業務に携わり、米国グーグル・グループの本部にも関係の深い専門家・李戈氏(仮名)に、3月24日、本紙記者が聞いた。
目先の利益か、企業の根幹堅持か
「検索結果の公正さの保証は、人間ではなく、機器によってなされなければならないとグーグルは堅く信じている。いかなる人の判断も、それが加われば公正性に影響するからだ」
それがグーグル創始者の認識であるという李戈氏は、「中国当局による情報検閲の要求は、グーグルの根幹を揺るがすものである」とも述べる。
同氏によると、グーグル検索の基礎であるページ・ランク理論は、「ユーザーに人気のある文章(またはサイトやトピックス)がインターネット上で必ず転載されるはずであり、インターネット全体でその転載回数について統計をとれば、同類の文章(サイトやトピックス)のランキングが得られるはずだ」というもので、決して複雑なものではないという。
李戈氏は、グーグルに対する中国当局の情報検閲要求は、実質的にグーグル検索に対して大量の人為的操作が加えられるばかりか、共産主義政権の価値観に基づく検索結果をユーザーにもたらすことになるが、それは「グーグルとして絶対に受け入れられない条件だ」とする。
「一度買ったら買い換えにくい自動車とは異なり、ネットはユーザーがキー操作一つでいくらでもサイトを換えて見られるものだ。もしもグーグルが公正性の上で信用を失ったら、全世界のユーザーがグーグルから流失し、グーグル社の存亡に関わる脅威となるだろう」
李戈氏はこのように述べて、巨大な中国市場を失うという目先の損失よりも、中国当局の要求に屈することにより、グーグルが公正性の上で信用を失う損失のほうが遥かに大きいことを挙げた。
ハッカー攻撃後の決意
今年1月12日、グーグルが中国においてハッカー攻撃を受けたことについて李戈氏は、この事件がきっかけとなって、グーグルは中国大陸市場の「最後の綱」を手放す決心をしたと述べた。
「通常、ハッカー攻撃とは、インターネット上の個人情報に対し、カード情報を盗むなどの実利目的のため、無差別かつ大規模に行われるものだ。一体どこの誰が、中国共産党政権に対して異議のある数十人ばかりの人士に興味を持って、ハッカー攻撃などしてくるだろうか。犯人が誰かは明白である。中国共産党の政府だ。この点はグーグル内部ではっきりしており、非常に感情的に抵触するものであった」
グーグル、中国進出の代償
06年1月、グーグルが中国市場へ進出する決定をした際に、中国当局が検閲をかけてくることは分かっていたはずだ。その時、慎重な判断ができなかった理由について李戈氏は、「中国という巨大市場を目の前にしたウォール街の雰囲気に負けたのだ」とし、次のように述べた。
「グーグル社は順調な発展を遂げ、社内に一種の理念と理想主義的な企業文化を形成してきた。また多くの人は、そのようなグーグルを偶像崇拝するように見てきた。グーグルが中国市場へ進出するに当たっては、社内の全社員・工員を集めての大会が開かれたが、そこで説明されたのは、なぜ中国共産党政権の要求に従い中国市場に参入する必要があるのかということだった。この件についてはグーグル内部でずっと大きな見解の相違があり、グーグルの企業文化に大きな傷跡を残した」
グーグルにとって最も許せないのは、中国当局が過去に何回もグーグル本部に、中国以外でもマイクロソフトのサーチエンジン「Bing」のように情報をフィルタリングするよう求めたことである。
「このことは中国大陸での業務を人質に、グーグルに世界規模で中国当局の情報封鎖に協力するように脅迫することに等しい。これは疑いなくグーグルの根幹に触れるもので、グーグルは自らを納得させる中国大陸進出の口実さえも失ったのだ」と李戈氏は語った。
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