【大紀元日本10月29日】中国経済は依然として安定しておらず、厳しい下押し圧力に直面している。景気減速を食い止めるため、利下げなどの金融緩和政策が必要であると思われる。しかし、新規融資は再び不動産や鉄鋼など生産能力が過剰な分野へ流れ込み、経済問題を悪化させる恐れがある。中国当局の金融政策は、長期発展と短期目標の間で進退両難の状況に追い込まれている。
景気減速、利下げ圧力が強まる
22日付ロイター通信は、中国の経済成長率が25年以来の最低水準に落ちたため、中国人民銀行(中央銀行)は現在、利下げ圧力に迫られていると、中国の政策決定機関の情報筋の話として報じた。
これに対し、中国国務院発展研究センターの経済専門家は利下げ措置が景気刺激策の最後のチャンスとして、軽々しく実行することができないと述べ、金利の引き下げには慎重な姿勢を示した。
人民銀行は、流動性や下押し圧力のリスクに対し、小規模銀行の預金準備率を下方調整するなどの緩和措置を取った。また、一部の銀行には、短期的に資金を投入して貸付金を資金不足部門に誘導した。
これについて、中国国際交流センターの上級アナリスト、王軍氏は「中国人民銀行が短期流動性オペレーション(SLO)で多くの革新的な管理方法を取り入れたが、それに伴う効果は得られないようだ」と述べ、「人民銀行がすでに万策尽きて、現在は打つ手がない状況だ」との見解を示した。
利下げめぐる内部議論
ロイター通信の報道によると、人民銀行の利下げなどの通貨緩和政策をめぐり、国営メディアや経済学者の間で白熱した議論を呼んでおり、結論が出るまで、まだ数ヶ月続く見込みだという。
今年は中国経済がやや鈍化したため、政府は一連の経済刺激策を実施した。ロイター通信は、「今年7月、最高指導者の習近平主席が『新常態(ニューノーマル)に平常心で臨め』の概念を提示したことで状況が変わった」とし、「8月に開催された共産党非公式の北戴河会議では、重点は改革推進に置かれた」と北京指導部に近い情報筋の話として伝えた。
そのため、今後数ヶ月の間は、継続的に様々な緩和政策を実施するものの、年内は中国人民銀行が利下げ政策を実行する可能性は大きくないと見られる。しかし、資金流出が加速する場合、人民銀行は預金準備率を下方修正する可能性があるという。
経済の下押し圧力が高まり 進退両難の通貨政策
22日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、シティバンク(Citibank)の経済学者・丁爽氏は経済衰退の影響が中国各地に蔓延しており、中国の経済減速傾向は当分の間、逆転の兆しが見えないとの考えを示したという。
中国の債務増加速度は、当初、米国や日本、韓国が不況に陥った直前のレベルに匹敵すると言える。鉄鋼やコンクリートなど供給過剰に陥った商品を生産する企業は、資金源が切られる危機にさらされている。
米金融大手ゴールドマン•サックス証券の報告書によると、中国の不動産市場は、空室率が約20%に上るほどの不況を迎えたという。
中国国家統計局は21日、7~9月(第3四半期)の実質国内総生産(GDP)成長率が前年同期比7.3%増と発表した。前期比マイナス0.2%、景気の減速が明確になってきた。
また同局のデータによると、今年1~9月期迄の不動産販売率は10.8%下落し、小売販売総額の増加率も鈍化している。中国当局は引き続き改革を主張しているが、景気減速が続く中で改革だけでは経済停滞の圧力を軽減するには力不足であるとみられる。
中国の李克強首相は21日、北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会議に参加した際、改革措置の効果が表れるまで、一つのプロセスが必要だと述べた。
しかし、今まで経済浮揚のため、中国当局はいくつかの短期的な政策を頻繁に実施してきた。その中で最も注目されるのは、中国人民銀行が主要な商業銀行に低金利融資を増加させたことである。さらに、中央政府と地方政府は、鉄道や地下鉄、情報技術などの産業に支出を増加させたことで、経済学者らは、当局が継続的に同様の措置を推進すると予測した。
政府の関連部門や委員会が利下げ政策などを含むより有力な経済刺激策を提案していると中国政府筋は言う。しかし、既存の中国経済システムのもと、新規融資は不動産や鉄鋼など生産能力が過剰な分野へ流れ込み、長期間蓄積してきた経済問題を悪化させる恐れがある。こうした現象は、中国の通貨政策が進退両難の状況に陥ったことを物語っている。
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