中国の不正ワクチン問題をめぐって、市民の怒りは収まっていない。7月30日、接種後の後遺症に苦しむ子供らの親が北京で抗議デモを行い、メーカーの刑事責任を厳しく追及するよう求めた。当局はデモを鎮圧、不正ワクチンについての報道規制・ネット規制を始めた。一部の被害者は大紀元に取材を依頼した。
被害者の親「政府を憎んでも憎み切れない」
湖南省出身の朱春暉さんと湖北省の王路さん(仮名)、江西省の廖房昇さんなど3人の子供は、予防接種を受けた後、重い病を患った。いずれのワクチンも政府から接種を義務付けられたものだった。
朱さんの娘は2017年10月、4歳の時に長春祈健生物製造の水ぼうそうワクチンを接種した。その後、再生不良性貧血との骨髄機能低下による貧血を患った。あざができやすく、出血すると止まらなくなるという。
王さんの娘は16年、DPTワクチンとインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを接種した後、歩くことができず、知能発達にも異常がみられた。
廖さんの息子は15年、1歳半の時に接種した製薬会社・北京民海製造のHibワクチンで、低熱とけいれんが繰り返され、17日間も意識不明状態にあった。病院での検査で、右脳の3分の1の脳細胞が壊死したことが判明し、病毒性脳炎と診断された。現在も、てんかん発作に苦しみ、ほとんど自力で歩けないという。
保護者らは、親族からの借金、マイホームの売却などで治療費を工面しているが、全く足りない。「どう生活して行けばいいのか、途方に暮れている」
3人は、医療事故として、地元政府に事故の調査や賠償を求めたが、応じてもらえなかった。
廖房昇さんは、7月30日北京での陳情活動に参加した。「目的はただ一つ。政府が責任を持って、苦しむ子供たちを救済してほしいだけ」
しかし、廖さんが北京入りした後、地元政府が派遣した職員に尾行されていた。「北京に来てから、病院や買い物に行っても、ずっと尾行され、監視されていた」
「今まで、ワクチン問題で地元政府に何回陳情しても無視されてきた。今、北京で陳情したら、すぐ弾圧される。この政府はもう信用できなくなった。絶望した。政府を憎んでも憎み切れない」
米ラジオ・フリーアジアなどの報道によると、北京市警察当局は数十名の警官を出動させ、陳情者を交番に連行した。
有毒粉ミルクと不正ワクチン問題、責任者が同一人物
中国では近年、食品や薬品の安全問題が相次いだ。08年に、食品安全問題の代名詞となる有毒粉ミルク事件が起きた。化学物質メラミンが混入された粉ミルクを飲んだ乳児6人が死亡し、30万人以上の乳幼児に健康被害が出た。事件をめぐる当局の対応から、不正問題が多発する原因がうかがえる。
問題発覚後、有毒粉ミルクを生産した河北省三鹿集団と国の監督機関は責任を問われ、複数の幹部は処分された。
そのなかに、当時の国家食品薬品監督管理局食品安全監督司の孫咸澤・司長も含まれている。同氏には行政処分が下された。しかし、孫氏は11年に国家食品薬品監督管理局情報センター主任に、12年に同局の副局長に昇格した。孫氏は、14年6月から同局の薬品安全総監を務め、ワクチン企業を監督する立場になった。今年2月、同氏は定年退職した。
ほかにも国家品質検査総局のトップ・李長江党委書記は同事件で08年末に免職されたが、09年9月に新たなポストに任命され、復帰した。
フランスメディアRFIの報道によると、粉ミルク問題で免職または降格された幹部は現在、全員政界復帰した。
一方、有毒粉ミルクを飲み腎結石を患った北京の女児(3歳)の父親・郭利氏は損害賠償をめぐって企業と話し合ったが、「脅迫」の罪で訴えられ、5年の有罪判決を言い渡された。刑期満了して出所後、同氏は裁判のやり直しを申請し、無罪となった。しかしその間、妻と離婚し、娘とは現在疎遠になっているという。
同じく有毒粉ミルクを飲んで左腎に結石ができた男児の父・趙連海氏は08年、被害者の情報交換サイトを開設し、抗議活動を呼びかけたため、2年間の有罪判決を受けた。罪名は「騒乱挑発」だった。
有毒粉ミルクの生産メーカー・河北省三鹿集団の田文華会長は09年、無期懲役を言い渡されたが、服役中の「態度が良好のため」、すでに3度の減刑を受け、刑期が15年に短縮された。
ワクチン問題について、2010年3月、中国経済日報の王克勤記者は「山西省ワクチン不正問題についての調査」を発表した。のちに、報道掲載を決定した同社社長、編集長が左遷された。11年7月、調査報道部は解散し、王記者は解雇された。
ネットユーザーは「孫咸澤氏の復帰はこの国の政治体制の縮図だ」と交流サイト・豆瓣網に書き込み、問題は起こるべくして起きたと指摘した。
「形だけの監督部門、利益に目がくらむ企業、そのしわ寄せを子どもは一身に受けた」
不正ワクチンが海外に流通
国営新華社通信は7日、長春長生生物科技が製造した問題のワクチンの一部は海外にも輸出されたと当局の調査結果を公表した。
調査によると、同社は有効期限の過ぎた原液を使用してヒト(人)用の狂犬病ワクチンを生産した。ワクチンに偽りの生産期日や製造番号を記したことも分かった。一部は2014年以降、国外で販売されている。
同報道は、不正ワクチンを流通した国や時期についての詳細を示さなかった。
中国メディア「南方都市報」によると、国際市場に積極的に進出してきた同社は近年東南アジア、中東、中南米、アフリカ、ロシアなど約20カ国にワクチンを輸出していた。
(大紀元ウェブ編集部)
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