米コーネル大学は言論の自由に対する圧力を理由に、中国人民大学との学術協力プロジェクトを一時中止することを決定した。深センで起きた労働争議運動に関わった人民大学の学生を、当局が処分したことが要因だという。米フィナンシャル・タイムズが29日に報じた。
コーネル大学は、中国名門校・人民大学との学生交流や研究協力など2つのプロジェクトを停止した。これは近年で、言論の自由への懸念を理由に、中国の大学と海外の学術機関との協力関係が断たれた初のケースとなった。
今夏、深センにある工場、佳士科学技術の従業員が労働組合の設立を求め抗議運動を展開し、人民大学の複数の学生は従業員を支援してきた。同大学は、学生数人を処罰した。コーネル大学は、これを言論の自由に対する深刻な侵害だと非難した。
コーネル大学産業労働関係学の国際プログラム担当アリー・フリードマン氏は同紙の取材に対して、「労働者の権利のために立ち上がった学生たちに対する人民大学の暴挙は、学問の自由を著しく侵害するものだ」と述べた。
さらにフリードマン氏は、諸外国の大学は中国の大学との協力を再考すべきだと提言した。
19世紀に設立されたコーネル大学は、世界の大学ランキングで5位(2015年)の世界的名門校。中国国内の大学で5位につける人民大学と、2014年から労使分野で学術連携協定を結んでいる。
深セン佳士科学技術では2018年7月、労働組合を結成するための抗議運動がおこり、一部の学生が工場内施設に立てこもるなど注目が集まった。武装警察は学生らを強制連行し、8月に強制的に騒動を鎮圧した。
数十人の労働者と学生が拘束され、4人の工場労働者に有罪判決が下った。
この組合結成運動を支持していた人民大学哲学部の学生・楊舒涵さんは、北京で地下鉄に乗車中、ならずもの10人に連れ去られ、恫喝された。楊さんは1年間の休学を命じられた。
同大学の張子涵さんは、教室内で労働争議に加わったことで教師から批判され、すべての収集した情報を削除するよう要求されたという。人民大学は同時に、労働問題に関わる学内サークルの一つを解散させた。
北京大学など他の大学でも、同労働争議に関わった学生たちに懲罰が下っている。
中国経済の成長鈍化で労働者による抗議活動が増えている。しかし、大学生がこういった活動に参加することに当局は神経を尖らせている。
2017年8月、英ケンブリッジ大学出版局は中国共産党当局の検閲を受け入れ、当局が問題視する中国研究の論文315点へのアクセスを遮断した。中国当局は海外の大学まで圧力を掛け検閲を強化しており、世界的に学術の自由への懸念が高まった。同大学は「世界的に学術権威のある出版社のするべきことではなかった」として、のちに検閲を解除した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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