昨年急死の中国人物理学者、15歳から中国情報当局の管理下に 中国の元政府高官が暴露

2019/01/25 更新: 2019/01/25

中国元政府高官はこのほど、昨年12月に急死した中国系米国籍物理学者の張首晟氏について、上海名門、復旦大学物理学部に入学した15歳の時から将来、西側のハイテク情報窃盗要員になるよう教育を受けていた、と明らかにした。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が23日に伝えた。

米スタンフォード大学物理学の名誉終身教授である張首晟氏は昨年12月1日、55歳の若さで亡くなった。自殺とみられる。生前、張教授は欧州物理学会の物理学賞(EPS Europhysics Prize)やアメリカ物理学会のオリバー・E・バックリー凝縮系賞など、国際物理学界の数々の重要な賞を受賞した。

米科学誌「サイエンス」は2007年、張教授が率いる研究チームが06年に提唱した量子スピンホール効果について、「世界十大成果」の一つと評価した。また、2017年7月に張教授の研究チームが、「天使の粒子」と呼ばれるマヨラナ粒子の存在に関する証拠の発見に関わった。物理学界では、教授のノーベル賞受賞がささやかれていた。

「千人計画」

張教授の死は、米政府が中国当局主導の海外ハイレベル人材の招致プログラム「千人計画」を捜査していることに関連性があるとした。同教授は「千人計画」初期のメンバーでもある。

米国在住でかつて中国の統一戦線部門の高官だった程干遠氏は、米VOAに対して「張首晟氏は『千人計画』に深く関与していた」と話した。

程氏によると、70年代末から80年代初めにかけて、鄧小平が改革開放の方針を打ち出した時、すでに計画を立てていた。「国内のエリートや人材を西側に留学させ、技術情報を盗ませる計画だった」

1978年、独学で高校の内容を勉強し、中学3年生だった張教授はその計画のために設置された名門復旦大学のとある学部に入学した。

復旦大学の「物理二系」

復旦大学法律学部の卒業生である程干遠氏によると、「当時から、復旦大学内に『物理二系(物理学第2学部)』が存在していた。内部では『核物理学部』と呼ばれていた」という。復旦大学内部の情報を入手した程氏は、「『物理二系』は公安部情報部門の管理下に置かれていた」とVOAの取材で述べた。

「当時、中国の公安部と国家安全部はまだ分離されていなかった。公安部第一局、すなわち政治保衛局と国防科学技術工業委員会がこの物理二系を管轄していた。私の知る限り、学部部長は公安部第一局の情報部員であった」

中国政府系メディア「人民政協報」は2014年、ベールに包まれている「物理二系」について報道した。

報道では、「復旦大学のキャンパスにかつてミステリアスな学部、原子力学部があった」「守秘のため、対外ではコードネーム『物理二系』として使われていた」と述べた。また、「物理二系が入る建物は、堀に囲まれた円形の屋敷で、出入りするには1本の橋しかない。厳重体制を敷かれていた」

程干遠氏によると、当時物理二系に入学したのは、政治的に問題のない人で、なかに党幹部の子弟「紅二代」が多かった。中国科学院上海分院がウェブサイトに掲載した情報によると、江沢民・元国家主席の息子、江綿恒氏は1977年復旦大学の物理二系を卒業した。

程干遠氏は、「張首晟氏は1978年に復旦大学の物理二系に進学し、翌年同校の国費留学生としてドイツへ派遣された。その1年後に米国に留学し、ノーベル賞物理学賞の受賞者で中国系物理学者、楊振寧教授の指導を受けた」と述べた。

張首晟教授は生前、中国国内情報サイト「網易科技」のインタビューを受けた際、「米国で研究活動を行っているが、(米中間の)科学の架け橋としての役割も果たしたい」と述べた。

2008年に中国共産党政権は「千人計画」を始めると、その翌年、張教授はメンバーに選ばれ、清華大学で教鞭をとった。張教授の働きの下で、米中双方の一部の研究企業やハイテク企業間が連携するようなった。張教授は2013年、中国科学院外国籍院士と選ばれた。院士は科学分野における最高位の称号で、終身称号でもある。

程干遠氏によると、80年代米に留学し物理学博士号を獲得した中国人エリートの多くはその後、中国国内の科学研究機関や大学と交流を深め、西側の技術を中国当局に渡した。

「中国当局も彼らに多くの優遇措置を与えた。彼らは米国の研究機関や大学で勤務しながら、中国当局から潤沢な資金を提供されたため、富裕層になった」

米連邦捜査局(FBI)は昨年から、「千人計画」に選ばれた中国系米国籍研究者を捜査し始めた。昨年11月20日、米通商代表部(USTR)が、米通商法301条に基づく対中制裁措置に関する最新調査報告書を発表した。同報告書は、中国当局がベンチャー・キャピタルを通じて米の先端技術と知的財産権を取得しようとしているとし、張首晟教授が創立した投資会社、丹華資本(ダンファー・キャピタル)を名指して批判した。

社名の丹華は、教授が在籍する米スタンフォード大学の中国語、「史丹佛大学」と中国を意味する「華」から由来している。

張首晟教授とファーウェイ

2013年に設立された丹華資本はシリコンバレーなどのスタートアップ企業に積極的に投資してきた。投資対象会社は、ビックデータ、クラウドコンピューティング、ロボット技術、バーチャル・リアリティーなどの分野で速いスピートで成長しているGoodDate、Cohesity、3DR、GraphSQL、EverString、Meta、Qeexo、Trustlookなどがある。

中国政府系メディア「中国新聞網」昨年3月16日付によると、丹華資本が出資した2社の企業は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を含む大手企業と業務提携を結んだ。

同報道では、丹華資本の仲介で、米Qeexo社が開発したダッチ・スクリーン技術が初めてファーウェイ製スマートフォン、P8シリーズに採用された。また、グラフデータベースを提供する米GraphSQL社は、中国電子取引商最大手アリババ集団傘下の電子決済サービス、支付宝(アリペイ)と中国電力配送会社、国家電網有限公司の技術サプライヤーになった。

現在、ファーウェイはアリババに次いで、量子コンピューターの開発を加速化している。張首晟教授のマヨラナ粒子研究は、量子コンピューターの研究に大きな進歩をもたらすと期待された。

昨年1月、張教授は「網易科技」に対して、マヨラナ粒子は量子コンピューター(の開発)に「革命的な影響を与える」と述べた。

また、2017年7月15日、中国北京で行われた「網易未来科技サミット」に参加し講演を行った張教授は、量子スピンホール効果を応用した新型ウェハーの研究を進めていると明らかにした。

ファーウェイは中国公安当局の金盾工程(インターネット情報検閲システム)の開発に密接に関与した。金盾工程は、江沢民による伝統気功グループ、法輪功への弾圧政策に合わせて、江沢民の息子、江綿恒氏の指導の下で開発された。目的は、国内外で法輪功情報を封鎖することだ。

ファーウェイの公式ウェブサイトは過去、「2002年9月3日、金盾工程弁公室の李潤森氏がファーウェイの北京研究所を訪問し、金盾工程の建設に対するファーウェイの関与を称賛した」との政府系メディアの報道を転載していた。

張教授が亡くなった昨年12月1日、中国通信機器大手の華為科技(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏が、米の対イラン制裁に違反したとして、カナダで拘束された。

(翻訳編集・張哲)

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