米ワシントンで27日に開催された中国のごみ処理問題に関するシンポジウムで、中国のごみ処理問題が改善されないのは、地方政府の抵抗が原因だとの見方を示した。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が27日伝えた。
主催者の米環境法研究所(ELI)中国部門の劉卓識・主任によると、中国では毎年膨大な量のごみが排出される。そのなかで、有害ごみは年間1億トンにも上る。いっぽうで、ごみ処理能力が立ち遅れているため、適切に処理されるごみの量は全体の半分にも及ばない。
劉主任は、適切に処理されないごみは環境を汚染するだけでなく、住民の生活に危険を与えると指摘した。「3月21日、江蘇省塩城市の化学工場の固体廃棄物倉庫で火災が起きた後に、大爆発が発生した」
中国当局は25日、この事故で78人が死亡し、566人が負傷したと発表した。
中国で2015年に実施された新たな「環境保護法」では、国内環境保護非政府組織(NGO)が問題のある企業を提訴できる。
劉主任によれば、近年、中国江蘇省や浙江省など各地の地方政府は、NGO団体に地元企業の違法行為について情報を提供している。「しかし自然保護のためではない」
中国経済がまだ立ち遅れていた1980年代、地方政府は企業からの投資を誘致するために、企業に対して多くの優遇政策を打ち出した。しかし今、これらの企業の収益が悪くなり、税金の納付も減った。地方政府は税金を獲得するため、これに代わる新たな企業を誘致しようとしている。環境保護関連の訴訟はこの解決策となった。
「地方政府は環境保護団体を利用して、古い企業を追い出そうとしている」と劉主任は指摘する。
米シンクタンク、ウイルソン・センター(Wilson Center)の「中国環境フォーラム」のディレクターを務めるジェニファー・ターナー(Jennifer L. Turner)氏は、リサイクルの推進でごみ焼却施設の数を減らせるが、地方政府は逆に施設を増やそうとしていると指摘した。近年中国各地で、ごみ焼却発電施設の建設をめぐる抗議デモが多発している。
ニューヨーク大学上海校の李逸飛・環境学助教授は、上海市政府を例に、中国ではごみの分類やリサイクルに関する環境教育の効果が薄いと指摘した。
「市民らがごみを分類しても、結局、ごみ収集車がごみを一緒に持っていく。このため、市民はごみの分類が無駄だと感じる。このような現象は各都市でよく見られる」
李助教授によれば、中国住宅都市農村建設部(国土交通省にあたる)が都市部の生活ごみを、生態環境部(環境省にあたる)が工業用固体廃棄物をそれぞれ監督管理している。「生活ゴミと工業廃棄物の回収率が違うため、自身の業績を気にする地方幹部はゴミの分類と資源のリサイクルに抵抗している」
「ごみの減量化やリサイクルを本格的に推進するならば、回収率が算出される。これが昇進の際の判断基準にもなるため、地方幹部はリサイクルの推進を拒むのだ」
また、中国当局はごみ焼却発電施設について、「グリーン経済」の基幹産業と位置付ける。各地の幹部らは、処理能力のより大きなごみ焼却発電施設を増やすことが、自らの出世につながると考える。「このような政策は廃棄物リサイクルの方針と矛盾する」と李助教授らは指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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