スティーブン・モッシャー(Steven W.Mosher)人口研究所の会長はこのたび、中国共産党によるDNA収集計画と人口統制について分析する文書を大紀元英字版に寄稿した。同氏は当局によるDNA収集と解析は、共産党の掲げる3つの武器「人民解放軍」「政治宣伝」「統一戦線」に加え、4つ目の武器だと主張している。
モッシャー氏は、中国国内のみならず、海外でもDNA兵器は使用されると警告している。下記はその抄訳。
消え始めたSNSアカウント 中国全土の男性DNAデータベース 2019年末に運用か
中国共産党政権が行っているDNA収集、解析プログラムは、全国民の14億人まで網羅できるように設計されている。
すでにDNA収集を実施し、完了している計画もある。例えば、ウイグル人やカザフスタン人のような「厄介な」少数民族、小中学校の生徒、そして一般人を対象としたプログラムがある。
ウォール・ストリート・ジャーナル2017年12月26日付によると、四川省楽山市犍為県の現地政府は数百人の幼稚園児、小中学生、高校生男子の唾液サンプルを、県の医療機関に提出するよう求めた。
同年の報道によれば、中国警察は2020年までに1億例のDNA情報を管理することを計画している。
大紀元は最近、公安部が各地方当局に男性を対象としたDNA収集計画を通達する内部文書を入手した。2017年11月7日付の同文書は、『全国Y-STR DNA犯罪調査と情報データベース』と題されている。この公安当局の指令には、何百万人もの中国人男性からY染色体DNAデータを収集、分析、保存する方法が非常に詳細に説明されている。
男性しかないY染色体は、父親から息子に変化せずに受け継がれる。このため、親戚関係にある男性のY染色体は、ほぼ同一だ。
指令書によると、公安当局から指示を受けた職員は、調査する対象地域のすべての家族に家系図を提出するよう求める。そして、男性の1つの系譜が特定されれば、そのなかの1人以上の男性は血液サンプルを提出するよう要求される。
こうして男性DNAデータベースを作成している。これにより公安部の捜査官は対象となる人物を拘束、逮捕、投獄、また処刑することが非常に簡単になる。
指令書によれば、この全国の男性を対象にしたDNAデータベース計画は2019年末までに完了し、運用するという。
重要なのは、共産党政権下の中国でDNAデータベースが使用される目的は、単なる犯罪捜査ではないことだ。実際に、何ら不正行為をしていない何千万人もの人々からDNAが収集されている。
北京の元警察職員・李金平氏は2017年、大紀元の取材に対して、収容されている容疑者は「犯罪を犯したかどうか、健康であるかどうかにかかわらず、DNA検査を受ける」という。構築されているDNAデータベースは、政権に異議を唱える人を管理するためのツールとして考えられている。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、中国警察は、一般市民とのすべての接触をDNAサンプルを収集する機会として利用しているという。唾液や血液サンプルを採集された人々の中には、中国のSNS微博で党を批判した人や、身分証明書を忘れた人がいる。また、出稼ぎ労働者、炭鉱労働者、アパートの賃貸人など、警察が「社会の安定を危険にさらす」と考えるグループのメンバーも標的にされている。彼らは誰も犯罪を犯していない。
こうして継続的にDNA収集を行った結果、推定1億のDNAサンプルが収集、分析され、政府の巨大なデータベースに追加された。毎月、さらに何百万も追加されている。ちなみに、FBIは現在、有罪判決を受けた1300万人のDNAデータと、逮捕された300万人のDNAデータを持っている。
全体主義の国なら「犯罪」は何でも定義される
中国共産党による大規模なDNA収集には、2つの目的がある。自由社会のように「犯罪と闘う」ためよりも、全体主義の中国では「社会を支配する」ことを目的としている。一党が支配する国のなかで「犯罪」は事実上、国家転覆罪や動乱扇動罪などになる場合が多い。弱者を擁護する人権弁護士から、無神論を唱える党規を受け入れない信仰者まで、「犯罪者」として逮捕されている。
1960年代共産党による革命闘争では、「黒五類」(地主、資本家、反革命者、悪人、保守派)に対して激しく残忍な犯罪が行われた。2012年、共産党は「人権弁護士、有神論者、異論者、インターネット上で影響のある人物、社会の底辺層」を「新黒五類」と定義した。これらの五類に位置付けられた人々は、共産党統治にとって脅威とみなされた。
男性DNAデータベースは、警察、検察、司法、共産党員、政府職員も提出対象となっている。これは中央政府が、大規模に人口の思想を監視し、官員でさえも求心力が失われていることを怯えているのかもしれない。
米上院トム・コットン議員(共和党)は最近、議会で中国共産党によるDNA収集について警告した。「中国政府は、個人のあらゆる動きを追跡できるデータベースを作成するために、生体認証技術の発展と応用に数百億ドルを費やしている。顔認証、情報監視、強制DNA収集などだ。人を遺伝子レベルに至るまで完全に管理する、全体主義システムそのものだ」
スティーブン・モッシャー(Steven W.Mosher)
人口研究所代表。『アジアのいじめっこ:中国の夢は世界秩序への新たな脅威』(2017.11)著者。モッシャー氏は、スタンフォード大学で著名な遺伝学者ルイージ・カバリ・スフィルツァ(Luigi Cavalli-Sforza)のもとで生物学を学んだ。
(翻訳編集・佐渡道世)
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