取材の裏方か 監視の目か 中国のニュースアシスタントの素顔

2025/09/17 更新: 2025/10/22

中国で活動する外国メディアの記者は、中国人の「ニュースアシスタント」(フィクサーとも呼ばれる)に大きく依存している。彼らは翻訳、取材先との交渉、各種事務手続き、記者への同行などを担い、外国人記者にとって不可欠な存在だ。

しかし、多くの国とは異なり、彼らは外国メディアに直接雇われているわけではない。中国の法律では、必ず中国共産党(中共)外務省の管理下にある国営の人材派遣会社を通じて雇用される。つまり、取材活動を支える「橋」となりつつ、当局の監視網の一部として機能せざるを得ない立場にある。

「盗聴電話を使うようなもの」

従来、ニュースの本質は社会の正常さや美しさを讃えることではなく、「第四の権力」として政府や社会の権力を監視・抑制することにある。しかし中国では、ニュースはしばしば中共によって自己賛美の道具に仕立てられている。そしてニュースアシスタントの役割も、ときに当局が外国メディアの活動を監視するための手段として利用されている。

ニュースアシスタントは通常中国国籍を持つ人で、外国メディアの担当官の裏方として働いている。中共は報道の自由に敵対的な立場を取っている。中国国内のあらゆるメディアは中共に統制され、体制の宣伝を拡散することが義務づけられている。

一方で、外国メディアは中共の編集統制下に直接置かれていないため、厳格に管理された中国の報道環境の中で目立つ存在となっている。そのため中共は外国人記者の活動を厳しく監視し、ニュースアシスタントも大きな制約にさらされる。

北京に駐在する台湾人記者の周氏(仮名)によると、中国に駐在する記者事務所でニュースアシスタントを置いているのは、主に国際的な大手メディアだ。

「主に西側のテレビ局ですが、ほかの外国メディアもニュースアシスタントを採用して、簡単な取材を手伝ってもらい、記者がその後に仕上げを行います。もちろん、これらの報道は普遍的な価値観に沿う必要がありますし、大陸のアシスタントたちもそれに参加したいと考えています。なぜなら、西側の記者がニュースをどのように扱うか、その原則を学べるからです」

中国においてニュースアシスタントは、外国メディア報道を支える舞台裏の存在である。彼らは言語や文化をつなぐ橋であると同時に、制度による制約ゆえに外国メディアと当局の間の「緩衝地帯」ともなる。報道の自由が制限された環境の中で、その存在は外国メディアが中国で活動する際の特殊な複雑さを際立たせている。

「ニュースアシスタントを雇うのは、盗聴器が仕込まれた電話を使うようなものです。アシスタントを置く以外に選択肢はありません。国家安全部(中共の秘密警察)の職員から食事やカラオケに誘われることもありますが、私はいつも断っています」

外国人記者を助ける存在でありながら、アシスタント自身は常に当局の目にさらされている。こうした体験は、外国人記者とその雇用主、そして中共の国家安全当局との間で板挟みになるニュースアシスタントの微妙な立場を物語っている。

三者関係に縛られる構造

表向き、アシスタントは中共が認可した「派遣会社」に所属している。給与は派遣会社から社会保険料や管理費を差し引かれて渡される。外国メディアの指示の下で働きながら、法的には体制側の会社に縛られているのだ。

安全上の理由から匿名を希望する元ニュースアシスタントの女性は「給料は外国メディアから直接支払われたわけではありません。まず労務派遣会社に渡り、そこから社会保険料や管理費を差し引いた残りが私に支払われていました」と振り返った。

こうした仕組みは「三者関係」と呼ばれる状況を生み出している。中共公認の派遣会社は、外国人記者の下で働くうえでの仕事に加えて、当局からの「義務」も課してくる。多くのアシスタントは、常に記者・取材対象者・当局の三者の間で板挟みになって立ち回っていると語った。

別の元アシスタント、陳氏(仮名)は派遣会社から「外国人記者の活動が中国の法律に違反していないか注意するように」と言われたことがある。
「もし明らかに『違法』とされる取材を報告しなければ、私自身が処分を受けることになるのです。表向きは『記者の安全確保』という建前でしたが、実際には外国メディアから給料を受け取りながら当局の監視役を担わされていると感じました」

「あるとき、詐欺的集金行為に抗議する人々を取材しようとしたのですが、取材対象者が直前に家族に説得されて断ってきました。記者は焦っていました。私は取材対象者に『顔を出さなくてもいい、音声だけでもいい』と伝えて安心させようとしましたが、それでも拒否されました。最後には記者に『仕方ない、他の人を探しましょう』と言うしかありませんでした。その日の夜、(当局から)電話がかかってきて、当日の取材状況について尋ねられました」

また、しばしば突発的な状況に直面するとも語った。
「取材対象者が一度は同意したのに、現場で突然、地域の幹部に止められることもあります。記者からは『段取りが悪い』と不満を言われますが、私は必死で『普通の取材で、政治には関係ない』と説明して交渉します。うまく切り抜けられることもあれば、諦めるしかないこともあります」

ニュースアシスタントの役割は複雑で、その背景は不透明だ。そのため多くの西側記者は、彼らが自分のために働いているのか、それとも監視役なのか判断に迷うこともある。

匿名を条件に取材に応じた外国人記者はこう語った。
「彼らはとても熱心に働いてくれます。でも人権弁護士、特に709事件で知られる弁護士たち――北京でも河南でも――に連絡をお願いすると、とても困った様子で、結局つながらないことが多い。私は直接弁護士と連絡を取るようにしました。彼らの置かれた立場は理解しています」

危険を伴う職業

ニュースアシスタントの陳氏は、自らが背負う心理的な重荷についても語った。
「人権活動家や弁護士、あるいは強制立ち退きの現場を取材するとき、記者以上に怖いのは私です。記者証を持たない私は、外国人記者を守ることさえできないのです」

ニュースアシスタントの人数は全国で数百人程度、主に北京や上海に集中しているが、彼らが直面するリスクは非常に大きい。

2014年には、ドイツ誌「ツァイト」のアシスタントだった張淼氏が、香港の民主化デモを取材した後、9か月間拘束された。2004年にはニューヨーク・タイムズのアシスタント・趙岩氏が「国家機密漏洩」で逮捕され、その後「詐欺罪」で懲役3年の判決を受けた。

外国人特派員と違い、アシスタントには記者証も外交的保護もない。拘束されれば、より直接的に当局の圧力を受ける。

中国外国特派員協会は2022年、パンデミック下において外国人記者や中国人スタッフに対する嫌がらせが一層強まり、一部は拘束や尋問を受けた事例もあったと明らかにした。

「管理可能」で「追跡可能」

報道の自由を擁護する団体は、この制度の目的は外国メディアを常に監視下に置くことにあると批判した。

元内部関係者らは、この制度の目的はすべての雇用を公式の派遣機関を通して管理し、中共が記者の行動だけでなく報道内容までも監視できるようにすることだと指摘している。

外国メディアで長年ドライバーを務めてきた中国人男性は「アシスタントは結局、当局が外国人記者の立場を見極めるための道具です」と語った。
「彼らは中国籍なので、どうやって当局の指示に従わないでいられるでしょうか。外国人記者はいずれ帰国しますが、アシスタントは中国に残らなければなりません。だから『管理可能』で『追跡可能』なのです」

元アシスタントで現在ドイツに住む郝氏(仮名)は「『管理可能』とは、当局が派遣会社を通じて外国人記者の行動を把握し、何をしているかを監視できるという意味です。『追跡可能』とは、誰に取材したのか、何を書いたのかといった取材の過程をアシスタントが報告することを求められ、それによってすべてをチェックできるということです」と説明した。

外国メディアを制限する仕組み

中国におけるニュースアシスタントをめぐる規則が厳格になってきた。1990年代までは、外国メディアが直接中国人スタッフを雇うこともあった。しかし2008年に導入された新たな規定によって、すべてのアシスタントは当局が認可したルートを通じて雇用されることが義務づけられた。

北京在住の中国人研究者は「この制度は一方で外国人記者の活動を可能にしつつ、同時に『枠』を設け、すべてが管理下に収まるようになっている」と指摘する。

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。