中国河南省で、記者や外国人留学生など中国当局が「懸念する人物」の監視システム構築を進めていることがわかった。
BBCがこのほど確認した同省公安庁7月29日付の入札文書によると、構築予定の監視システムとは、監視カメラに接続された顔認識技術を用いて、目標を発見すると当局に通報する仕組みだという。
当局は監視システムに携帯電話、SNS、車、ホテル滞在歴、パスポート、不動産所有権、写真などの情報を取り込み、国のデータベースとも繋がっている。マスクやメガネで顔を遮った個人であっても、比較的正確に特定できることが要求されているという。
記者を「懸念度」で分類
文書によると、監視システムは記者を懸念度の高い順に「赤、黄、緑」の3段階に分類していることがわかった。
「赤」や「黄」でマークされた記者が現地のホテルにチェックインしたり、あるいは河南省行きのチケットを購入したり、省を跨いで移動した場合、すぐに当局に連絡される仕組みになっている。
このシステムは国と同省の監視カメラ3000台と繋がっている。少なくとも2000人の当局者と警察が操作可能。
監視アナリスト企業IPVMの運営責任者であるDonald Maye氏は、200ページにおよぶ同入札文書について、「中国の公安当局が記者を監視対象としてロックし、ターゲットの居場所を迅速に特定してその仕事を阻止するための効率を高めることができる」と指摘した。
契約金額500万元(約8941万円)にのぼる同システムの構築は、中国のIT関連企業NeuSoft社が落札した。2カ月以内の完成が求められている。
記者のほかにも、外国人留学生や「隣国からの不法移民の女性」もシステムの監視対象となっている。
中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の開催期間など、政治的に敏感な時期には、「戦時下の警報メカニズム」が作動して、懸念される人物に対する追跡が強化される。
BBCの報道を受け、11月29日、河南当局は同入札書類への一般ユーザーによるアクセスを禁じた。
外国人記者の管理を強化
同監視システムに関する入札文書が出されたのは今年7月29日。ちょうど、BBC、AFP、AP通信など外国メディアの記者が河南省の大洪水を報道し、嫌がらせや脅迫を受けたていた時期だ。
当時、被災地で取材中の外国人記者は住民に取り囲まれたり、服をつかまれたりした妨害行為を受けた。
中国外国人記者クラブ(FCCC)は「中国共産党傘下組織による言論は、中国にいる外国人記者の身の安全を直接脅かし、自由な報道を妨げている」と非難した。
(翻訳編集・李凌)
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