人口600万人のキルギスは近年、中央アジアで影響力を拡大している中国と関係を深めている。中国政府主導の巨大経済圏構想「一帯一路」にも参加し、中国資本で多くのインフラ建設が進められている。首都ビシュケクで行われた火力発電所の改修工事もその一つ。米ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙6日付の調査報道で、中国企業が同プロジェクトを取得するまでの一部始終を報じ、贈賄が契約獲得の決め手だったと示した。
NYT紙の同記事によると、工事を担当した中国企業は発電所の建設とメンテナンスにまったく実績がなかったという。
2013年、キルギス政府は老朽化した同発電所の改修工事に関して、各国企業に対して入札を公募した。2013年、同国の中国大使館がキルギス外務省とエネルギー当局宛ての書簡で、融資話をちらつかせ、建設の下請け企業として「特変電工有限公司(TBEA)」を薦めた。
同年9月、TBEAがこの契約を獲得した。中国国有銀行、輸出入銀行が融資を行った。
報道は、TBEAについて、「火力発電所の建設および維持において全く実績がなかった」とした。「キルギス政府は経験豊富なロシア企業を断って、TBEAを選んだことで、その後の災いを招いた」
2017年8月30日、改修工事は完了したが、2018年1月に一部のボイラーが大破したという。現地メディアの報道によると、当時は気温がマイナス27度という厳しい寒さの中、電力と暖房サービスがストップした。病院や学校などの公共施設も深刻な影響を受けたという。
中央アジアやロシアなどに関するニュースサイト「ユーラシアネット(Eurasianet)」は2018年1月30日に掲載した記事で、投資規模3億8600万ドル(約420億円)の改修工事は、住民の生活改善には役立たなかったと批判した。記事は、TBEAの契約獲得の経緯に焦点を当て、キルギス政府の一部の高官が中国当局から賄賂を受け取ったとの認識を示した。
同サイトの報道は、専門家の話を引用し、中国当局が改修工事のコストを故意に水増ししたと非難した。
キルギスは同プロジェクトで、今後20年間中国当局に対して、利息を含む総額4億7000万ドル(約511億円)を返済しなければならない。
昨年6月、キルギスの国家安全保障委員会(SCNS)は、TBEAをめぐる汚職の疑いでサパル・イサコフ元首相らを起訴した。検察側は、工事費用の過大計上によってキルギスは1億1100万ドル(約121億円)の損失を被ったとした。
ニューヨーク・タイムズによれば、身柄拘束中のイサコフ元首相はこのほど声明を発表し、汚職に関わっていないと主張した。元首相は、自身と他の高官の決定でTBEAを選んだわけではなく、「中国当局が決定した」とした。
同紙は、元首相の主張は「中国当局が外国の市場競争すら歪めることができることを証明した」との見方を示した。
キルギスのビシュケクで今年1月17日、住民らは中国当局の影響力増大に反発して抗議活動を行い、火力発電所の工事について再調査するよう要求した。また、キルギスが抱える対中債務の減少を求めた。
ニューヨーク・タイムズは昨年末、南米エクアドルのコカ・コード・シンクレア(Coca Codo Sinclair)ダムが稼働から2年後に、数千カ所にひび割れが見つかり、崩壊の可能性があると報道した。中国国営企業が出資し、同ダムを建設した。エクアドルは同ダムのため、中国当局から莫大な融資を受けた。
ロイター通信昨年7月の報道によると、南太平洋の国、クック諸島の元政府高官は、中国企業が下請けしているインフラ建設工事に不良品の資材が使われたと訴えた。元高官らは、中国企業が施工した体育館や警察署などの建築物の安全問題を懸念する一方で、インフラ建設で同国が抱える中国への負債が一段と増えると指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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