4月27日、日本外務省は「外交青書(令和3年版)」を発表した。今年の外交青書では、中国の海洋拡張などを懸念し、東シナ海や南シナ海における中国船舶の活動、新疆自治区と香港の人権状況が多く書き加えられた。332ページの文書のなかで「中国」について、273回も言及した。
外交青書とは、国際情勢の推移及び日本が行ってきた外交活動をまとめたもの。1957年以降毎年発行されている。喫緊な課題である「新型コロナウイルス感染症への対応」を巻頭特集として取り上げた。
中国の動向について、「中国の国防費は過去30年間で約44倍に増加しているが、予算の内訳、増額の意図については不分明」として、透明性を欠く軍事増強を安全保障上の懸念と断じた。尖閣諸島周辺海域においては、中国の船舶による領海侵入は継続しており、量的・質的にも拡大しているとした。2020年には、継続水域で中国船舶の航行日数は過去最高の333日となった。また、中国船舶の活動は国際法違反だと初めて指摘した。
また、新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念として、国際社会における普遍的な価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要との考えを示した。
これに対し、中国は反発した。外務省報道官の汪文斌氏は「日本の新しい外交青書はいわゆる中国脅威を大いに誇張し、悪意を持って中国を中傷し、中国の内政に干渉している」と述べた。同氏によれば「日中関係は厳しい試練に直面している」、「外交ルートを通じて日本に厳粛に抗議した」という。
いっぽう、米国との日米同盟は「史上かつてなく強固なものとなっている」ものとされ、中国の拡張を念頭に米国との協力関係を強調した。令和3年版の外交青書では、「米中関係」を初めて一つの独立した項目として取り上げた。
台湾は日本と「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し」、日本にとって「極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」と表現した。また、「台湾のWHO総会へのオブザーバー参加を一貫して支持している」と述べた。
日本は、自ら提唱した世界的な構想「自由で開かれたインド太平洋」を重要視するとした。具体的には、「海洋秩序に関する政策発信や、海洋法の知見の国際社会との共有」、「自由で公正な経済圏を広げるためのルール作り」、「インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現」、「能力構築支援を通じたガバナンスの強化」、「海洋安全保障及び海上安全の確保を始めとした取組」を進めていくという。ASEANは「自由で開かれたインド太平洋」の実現において、実現の要として考えていると述べた。
(蘇文悦)
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