当局が発表したところでは、海上自衛隊の「令和3年度インド太平洋方面派遣訓練(IPD21)」は、「自由で開かれたインド太平洋」構想に対する日本の取り組みだけでなく、同地域の他諸国および米国と欧州の海軍との協力に対する日本の真摯な姿勢を強調するものである。
岸信夫防衛相の発言によると、インド太平洋方面派遣訓練の一環として艦船がニューカレドニアとパラオにも寄港することで日本政府は太平洋島嶼諸国の福利と安全に貢献する自国の意図を示した。
岸防衛相は、14週間にわたる派遣任務が開始された2021年8月下旬の記者会見で、「インド太平洋方面派遣訓練を通じて、日本防衛省と自衛隊は海自の戦術力向上および他諸国海軍との協力体制強化を図るだけでなく、民主主義や法治といった基本的な価値観と戦略的利益も共有する予定である」と述べている。
防衛省が発表したところでは、全長248メートル、基準排水量19,500トンのいずも型護衛艦「かが」が護衛艦の「しらぬい」と「むらさめ」を同伴して今回の展開を主導する。また、海上自衛隊のヘリコプター4機、潜水艦1隻、川崎重工業製の哨戒機「P-1」1機も派遣されている。
防衛省によると、9月1日に実施された日パラオ親善訓練で、「かが」と2隻の駆逐艦がパラオ海上保安局の巡視船2隻と共に戦術機動、通信、捜索救助の訓練に従事した。
演習後にパラオのスランゲル・ウィップス・ジュニア(Surangel Whipps Jr.)大統領を表敬訪問した海自第3護衛隊群司令の池内出海将補は、「民主主義、法治、自由で開かれた海洋利用といった共通の価値観を持つ日本とパラオは緊密な提携関係にある。海自は今後も両国の相互協力の深化に努め、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献していく意向である」と話している。
インド太平洋方面派遣訓練の派遣部隊は8月と9月にグアム周辺とフィリピン海で、「マラバール2021(Malabar 2021)」演習の2段階としてインド海軍、オーストラリア海軍、米国海軍との合同訓練も実施している。 インド太平洋方面派遣訓練では、オーストラリア、インド、インドネシア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、ベトナムへの寄港が予定されている。
ランド研究所の日本防衛アナリスト、ジェフェリー・ホーナング(Jeffrey Hornung)博士はFORUMに対して、日本が太平洋諸島地域に目を向けたことは重要な進展であると話している。インド太平洋方面派遣訓練派遣部隊によるニューカレドニアとパラオ訪問が日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)と時期を同じくして実施されたことからも、太平洋諸島地域に対する日本の傾倒が伺える。
日本の防衛省が初めて主催したこの多国間防衛相会合(2020年の開催予定が2021年9月2日まで延期されていた)は、太平洋島嶼諸国や同地域に関係の深い諸国を含む19ヵ国の代表者が参加して仮想形式で実施された。 ホーナング博士は、「(パラオとの)親善訓練自体はそれほど重要ではなく、両国の関係強化のほうがより有意義であると考えられる」と述べている。
仏領ニューカレドニアへの寄港は重要であると、同博士は付け加えている。これは同地域に唯一海外駐留部隊を常駐させている欧州大国に日本が働きかける機会となるためである。また、同地域を訪問して自然災害、違法漁業、航行の自由といった防衛懸念について指導者等と対話することで親善を育み、日本の立場を強化することができる。
同博士は、「これは非常に良好な提携関係の構築手段である」とし、「これは今回のインド太平洋方面派遣訓練の一環として日本が実施している事柄と密接に関連する。過去6ヵ月から8ヵ月の間に実施されたあらゆる対話や二国間会議の絡みで考えると、これはかなり重要な要素である。
日本は今回の派遣を通して、インド、英国、フランス、太平洋諸島、オーストラリアなど、あらゆる諸国との関係構築に全力投球しているのである」と説明している。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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