フランス国防省傘下の軍事学院戦略研究所(IRSEM)がこのほど発表した「中国(共産党)の影響力」と題する報告書の一部は、中米交流基金の対米浸透工作のフロント団体としての活動をまとめた。
中米交流基金(CUSEF 以下、交流基金)は香港を拠点とする非営利団体として登録されている。その公式サイトによると、設立目的は米中間の民間の対話と交流を促すことだという。
交流基金の創設者兼会長は香港特別行政区の初代長官・董建華(Tung Chee Hwa)氏。同氏は中国中央指導部の人民政治協商会議の副議長を務めている。
米国内では、交流基金は中国政府の政治的影響力を行使する組織としての評判を持っており、「中国共産党統一戦線工作部の傘下組織」と見なされている。
交流基金は長年来、米国の大勢の学者、政治家、軍部有力者、メディア関係者を中国に招待し、当局者に引き合わせているなどとした。
米国で「外国の代理人」として登録された交流基金は、米国の研究機関、大学、米国政府に影響力のあるシンクタンクなどに資金援助している。また、議会や地方政府、連邦政府に対するロビー活動のスポンサーになるなど、より広範かつ多様な方策で、米国政治に影響している。
2015年と16年、交流基金は当時のオバマ政権に近いシンクタンク「センター・フォー・アメリカン・プログレス(Center for American Progress)」の代表団訪中を実現させた。 2回目の訪中では、代表団は当時の張高麗(チャン・ガオリ)副総理、アジアインフラ投資銀行の総裁、中共中央軍事委員の高官らと面会した。
交流基金による対米ロビー活動の多くは、中国人民対外友好協会(対外友協)と連携して行っている。対外友協は中国の政府機関で、情報機関の工作員は、しばしば協会関係者を名乗り世界各国で諜報活動を展開している。
米議会 交流基金の対米浸透工作に警戒
米議会の米中経済・安全保障検討委員会(USCC)は2018年8月の報告書で、中国政府は対米影響力を深化させるための秘密工作を展開していると指摘した。報告書は、中国共産党は「中国政府の海外団体」を通じて、資金提供により米国の主要シンクタンクに影響を与え、中国に有利な提言を行うよう働きかけていると述べている。
「フォーリン・ポリシー」誌2017年11月号によると、交流基金は、外交政策研究で有名なジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)のあるプロジェクトに全額出資した。同プロジェクトは「中国のアジア及び世界でのより広範な役割、近隣諸国やパートナーにとっての意義」を研究テーマとしている。
USCC報告書は、SAISへの資金提供は中国共産党体制の意向を受けた統戦部による浸透工作の一環だと指摘した。
フォーリン・ポリシー誌によると、交流基金はSAISだけでなく、ブルッキングス研究所、戦略国際問題研究所(CSIS)、大西洋評議会、米国進歩センター、東西センター、カーネギー国際平和基金など、米外交政策の制定に強い影響力を持つ政策研究機関と提携している。
同誌によると、同基金は2016年、米国内のロビー活動に約66万8000米ドル(約7500万円)を費やした。在米中国大使館の使っている広告代理店に依頼し、米議会で「米中友好」に関するロビー活動を行った。 2017年初頭から11月末まで、交流基金のロビー活動資金は51万米ドル(約5600万円)に達した。
同基金は、ニューヨークにあるBLJ Worldwide社に月額2万9700米ドル(約330万円)を支払っている。基金の広報費用のほか、「中米焦点(China US Focus)」という親中派ウェブサイトの運営費用にも使っている。
米メディア「ナショナル・パルス(The National Pulse)」2020年12月29日の報道によると、交流基金が長年にわたり、外国メディアの関係者を中国旅行やパーティに招待し、メディアへの影響力を増幅させている。米国ではニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、ロイター、CNN、フォーブス、フィナンシャル・タイムズ、ブルームバーグなど主流メディアが招待を受けた。
(翻訳編集・叶子)
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