中国・福建省莆田市秀嶼区の平海鎮上林村で10日、一家殺傷事件が起き、2人死亡、3人が負傷した。容疑者の男は逃走中だという。いっぽう、インターネットを中心に、男に同情する声が上がっている。男は長年、村の有力者による理不尽な扱いを受け、繰り返し陳情してきたが、解決されなかった。
地元当局は、情報提供者に最大5万元(約88万円)の懸賞金を支払うと発表した。
メディアの報道によれば、容疑者の人物像について地元住民は「親切で多くの善行を積んだ正直者。海に飛び込んで溺れた子供を助けたこともある」と口をそろえて言う。
2017年、容疑者自宅の解体・新築工事が当局に認められた。古家が取り壊された後、新居の建築は準備段階から隣の家族に妨害され続けていた。一家5人は5年間、鉄の板で覆った小屋での生活を余儀なくされていた。30歳の長男も、これが原因で結婚できなかった。
容疑者一家の境遇はネットユーザーの共感を呼んだ。オンライン調査では、83%のネットユーザーが容疑者に同情を示したのに対し、被害者に同情したのはわずか3%だった。
容疑者のソーシャルメディアでの過去の投稿によると、住宅問題について複数の政府部門に苦情を申し立て、メディアに助けを求めてきた。インターネットにも投稿し世論に訴えたが、誰にも相手にされなかったという。
微博(中国版ツイッター)での過去の投稿で、容疑者は「一部の幹部は個人的な利益のために悪勢力と結託している。彼らは私の家づくりを妨害し、阻止した」と訴えた。
今年1月13日には、「どこに訴えればいいのか教えてください。すでに県や市の請願部門に申し込んだが、何の反応もない。どうか助けてください」と書いていた。
中国メディア「中国新聞週刊」によると、事件当日、台風で容疑者が住んでいた小屋が崩れ、一部の部品が隣人の庭(現場写真)に落ちたことから、双方が再び衝突し、口論から殺傷事件に発展した。
事件が報道された後、世論は地方政府に矛先を向け、地方政府の汚職と不作為が悲劇を引き起こしたと指摘している。
殺人の助長?物議の懸賞金
12日に地元政府が出した懸賞金の通知も物議を醸した。それによると、容疑者の居場所を示す重要な手がかりを提供した市民に2万元(約35万円)の懸賞金を支払う。いっぽう、遺体を発見した市民に5万元(約88万円)と倍の金額を出すという。
ネットユーザーの中には、これは懸賞金ではなく、「殺人の報酬」ではないかと疑問を呈する人もいた。
一部のメディアは、中国の刑事訴訟法の関連規定によると、刑事事件は県レベル以上の公安機関の管轄であり、地元政府は事件の捜査に協力するだけで、懸賞金を出す権限はないと指摘している。
世論の圧力を受けて、平海鎮政府は不正行為の助長を否定し、懸賞金の通知を取り下げた。
中国当局は、ネットユーザーの熱い議論に警戒を強めている。一部のネットユーザーは自分のコメントが削除されたと不満を漏らした。
(翻訳編集・王君宜)
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