スペイン拠点の人権団体セーフガード・ディフェンダーズは、2016年から2019年の間に600人以上の台湾人が世界各地から中国本土に送還されていたとする報告書を11月30日に発表した。中国共産党政権が強制送還などを通じて台湾の主権を弱体化させていると指摘した。
報告は、ウイグル人など少数民族や人権活動家、香港人らと並んで、在外台湾人もまた中国共産党による越境弾圧や強制送還といった法的な圧力を受けていると説明。台湾人は中国本土に「由縁も家族もいない」ため深刻な迫害の危険にさらされる恐れがあると警告を発した。
台湾政府は今回の報告書を受け、中国には海外で逮捕あるいは有罪判決を受けた台湾人に対する「管轄権はない」と主張した。中国側は反応を示していない。
セーフガード・ディフェンダーズは、台湾人の中国引き渡しの人数を通信社などの報道から統計した。多い国はスペインで219人、カンボジアで117人、フィリピンで79人、アルメニアで78人、マレーシアで53人、ケニアでは45人。
同団体はケニヤやスペインの事例を挙げた。中国共産党当局は2014年、通信不正の疑いでケニア首都ナイロビにいる中国人と台湾人の混合グループ76人を指名手配した。中国はケニアに対して「友好的な政府関係」を呼びかけ、中国人と台湾人を中国本土に送還させた。このうち少なくとも台湾人2人が中国国内の裁判で「自白」する様子が中国国営テレビで放送された。
スペインでは2017年から2019年にかけて通信詐欺に関わったとされる台湾人約300人が中国に送還された。人権団体は強制送還について「国際人権規約を無視しており中国における人権侵害の深刻さを理解していない」と非難した。
いっぽう2020年4月、チェコの最高裁判所は中国が指名手配している台湾人8人の身柄引き渡し請求を却下した。裁判所は、中国への送還は拷問などの非人道的な扱いを受ける危険性が払拭できないと判断した。
国連人権委員会は、生命に対する危機がある場合や公正な裁判を受ける権利が侵害される恐れがある場合、被疑者の引渡しや強制送還をしないよう加盟国に警告している。しかし、中国共産党政権の統治下では被疑者の基本的な権利が「公然と侵害されている」と団体は指摘している。
セーフガード・ディフェンダーズは、中国国内法における被疑者をめぐり相互法執行協定を締結している国々に対して、台湾人を中国本土に引き渡さないよう呼びかけている。
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