12日に米ハワイで開いた日米韓外相会談には、台湾をめぐる情勢が議題に挙がった。中国との関係を重視する韓国を含めた3か国で台湾問題の姿勢を示すのは異例。バイデン政権は、インド太平洋地域で影響力の拡大を図る中国共産党を抑制する地域のネットワークの構築を目指していると専門家は指摘する。
林芳正外相、ブリンケン米国務長官、韓国の鄭義溶外相は同日、共同声明をまとめ「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調した。北朝鮮の弾道ミサイル発射についても「国際秩序の不安を引き起こす行動」だとして強い懸念を示した。
韓国の梨花女子大学レイフ・イーズリー准教授は、日米韓外相会談で台湾が言及されたのは、米国が台湾防衛の強化のために多国間協力の拡大を図る狙いがあるとボイスオブアメリカ(VOA)の取材に述べた。こうすることで、中国共産党への更なる抑止につながると同氏は分析している。
バイデン政権のインド太平洋戦略 日米韓関係を特記
日米韓外相会談の数時間前、ホワイトハウスはバイデン政権で初となる地域政策方針「インド太平洋戦略」を発表した。台湾について「台湾の自衛能力支援を含め、パートナー国とともに台湾海峡の平和と安定を維持する」とし、台湾海峡の軍事攻撃の抑止についても明文化している。
地域の同盟国やパートナー国との協力を訴える同戦略は「インド太平洋の大きな課題のほとんどにおいて、特に日本と韓国の間の緊密な協力が必要」と記した。
別途項目を設けて強調された日米韓関係について「安全保障だけでなく地域開発や重要技術、サプライチェーン問題、女性のリーダーシップと活躍支援などについても協力していく。日米韓の地域戦略の調整も増えるだろう」と多方面で連携を強化していく方針を示した。
3カ国関係について、米国は特に経済安全保障の深化を期待しているとの見方がある。明海大学の小谷哲男外国語学部教授は「韓国をインド太平洋戦略、とくに経済安保に引き込むことが主目的。これは歴代政権には見られなかったこと」だと13日にツイートした。
日韓関係について歴史認識などをめぐり非常に厳しい関係が続く。松野官房長官は15日の記者会見で対面式の日韓首脳会談の予定や目処は立っていないとした。いっぽう「このまま放置することはできない」「健全な関係に向けて韓国に適切な対応を求めていく」と述べた。
日米韓会談と同じ日に行われた林外相と鄭義溶外相の日韓外相会談では北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって日韓・日米韓協力が重要であることを改めて確認した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。