雪に書いた反戦メッセージで有罪、ロシア市民に広がる自主規制

2022/03/12 更新: 2022/03/12

[ロンドン 11日 ロイター] – ベラ・コトワさんは8時間に及ぶ警察による拘束と裁判所での手続きの末、罰金3万ルーブル(約2万6000円)を言い渡された。軍の信頼を傷つけるような行為を刑事罰の対象とするロシアの新法により、有罪判決を受けた第一号の1人となった。

コトワさんはシベリア地方の街クラスノヤルスクで、ソ連の初代指導者レーニンの銅像の足元に積もった雪に、「戦争反対」というメッセージをハートマークを添えて書き込んだ。それが罪状だった。

クラスノヤルスクの地方裁判所は罰金刑を言い渡し、コトワさんは控訴した。

この事件は地元メディアや対話アプリのテレグラムで取り上げられ、広く知られるようになった。地元の警察官が、コトワさんが書いたメッセージを足で消す様子を映した映像も広まった。

コトワさんの事件を担当したウラジミール・ワシン弁護士は、「いわゆる軍事非難法で最初の事件、最初の判決の1つだ。雪の上に、自分の意見をたったの単語2つ書いただけで有罪になった」と話す。

ロシア連邦議会は4日、ロシア軍の信頼を損なわせようとする行為を刑事罰の対象とし、軍に関する「偽情報」の拡散を禁じる新法を可決した。プーチン大統領は先月24日、ウクライナを「非ナチス化」するための「特別軍事作戦」だとして侵攻を開始。民主国家を侵略するための偽りの口実だとして、国際社会から非難が集まっている。

<失職と報復>

コトワさんは控訴し、まだ罰金の3万ルーブルは支払っていない。ロシアの平均給与は月約7万8000ルーブルだ。

コトワさんだけでなく、抗議活動に参加する人たちは、戦争への疑念を表明したことで、自分や家族の雇用までもが脅かされるのではないかと心配している。新法の導入により、戦争に反対する市民が自分の発言や表現を「自主規制」しなければならなくなるケースが増えている。

ワシン弁護士は、「(戦争反対の)言葉は新法では禁止され、それを表明した人が逮捕され、裁判で有罪になっている」と話す。

同弁護士によると、コトワさんの事件の数日前にも、戦争反対の言葉が書かれたマスクや帽子を身に着けて広場へ散歩に出た女性2人に対し、罰金15万ルーブルが言い渡された。

地元のニュースサイトには、2人が罰金判決後に笑顔で裁判所を後にする写真が掲載されている。

ロシア国内で、ウクライナ侵攻を支持する人がどれほどいるかを量るのは難しい。世論調査機関VTsIOMによると、プーチン氏の支持率は2月27日までの1週間で6ポイント上昇し、70%となった。

しかし、ウクライナで起きている出来事について政府と異なる見方を示したり、閲覧するのはますます困難になっている。

リベラル系のロシアメディアや西側報道機関の多くは、記者を守るためロシア国内での活動を停止した。一方、英BBCは8日、「ロシア国内から報道する緊急の必要がある」として、英語でのリポートを再開した。

新法では、軍事力の使用に関する意図的な「偽情報」の拡散に最長15年の禁錮刑または150万ルーブルの罰金を科すとしている。

人権監視団体のOVD-Infoによると、ウクライナ侵攻以降、1万3912人がデモに参加して拘束された。

Reuters
関連特集: ウクライナ情勢