「中国の対日工作、特に政治家に対する対日工作は今日までは成功しているのではないか、と残念ながらそう思わざるを得ない」。中国共産党による人権弾圧問題に取り組んできた長尾敬前衆議院議員は日本の現状について警鐘を鳴らした。日本の政治の中枢には中国と利益関係を持つ者や、浸透工作により中国共産党の代理人となっている者が数多くいると指摘し、著書『永田町中国代理人』(産経出版社)のなかで、今日の日本が抱える問題を描き出した。
ーー新しい本を上梓された。どのような内容か。
現役時代に関わった対中政策や法案について書いた。途中でつぶされた、骨抜きにされたことなど。衆院選で惜敗した後に執筆した。悪口は書いていない。事実しか書いていない。もちろん事実を記すことによって物議を醸すことがあるかもしれない。財界にも厳しいことを言っている。しかし、ここでしっかりと事実を書いておかなければならないとの覚悟が私にはある。
ーー最近一番注目している話題はなにか。
ウクライナ情勢だ。完全に中国問題と連動している。旧ソビエト、すなわちいまのロシア、そして中国共産党は、ともに一党独裁の共産主義国家である。妙なことに、双方ともに常任理事国だ。常任理事国であるにもかかわらず、やりたい放題で、国連が全然機能しない。
今回は、ロシアに対する経済制裁や金融制裁が全然効いていないのではないかという指摘もあるが、相当効いている。ウクライナ侵略に対して西側諸国がどのような対応を取るかを一番注目しているのは中国だと思う。
中国はすでにチベットやウイグル、南モンゴル、香港そして台湾に対しては色々仕掛けてきた。そのなかで、もし中国が侵攻あるいは侵略に関わった場合、世界はどのような目を中国共産党に向けてくるのか、ということで言えば、やはり鏡を映しているようなものだと思う。絶対的に中国が注目してるだろうという意味合いでウクライナ情勢を一番注目している。
ーー昨年から中国人権非難決議を推進してきたが、時期が遅れ、内容が一部削除されたことについていかがお考えか。
中国に色々とお世話になっている、歯向かえない、ノーと言えないような方々の勢力が、おそらく想像以上に私たちよりも大きいのだろうと思う。中国の対日工作、特に政治家に対する対日工作は今日までは成功しているのではないか、と残念ながらそう思わざるを得ない。
いっぽうでロシアに関しては、ロシアからの日本の政治家あるいは財界に対する対日工作は中国ほど成功していないのではないだろうか。というのはロシアに対する非難決議は一週間も経たないうちに国会で決議ができた。政府も欧米に比べてはあとを追いかけるような形で判断の遅れは否めないが、中国に比べてははっきりとノーを突きつけた。財界はまだロシアとビジネスをしている。撤退をするならばロシア国内の財産が全部没収されてしまうので、臆する点はあるとは思う。
話を戻せば、中国の対日政策にサイレントインベージョンとの言葉が多く使われるようになったが、残念ながら成功していると私は理解している。
ーー日本人の中国共産党に対する意識の変化はあるのか。
中国共産党の恐ろしさに関する情報発信が増えたことで、日本人の意識は変化しており、注目の度合いが高まっていると思う。
本日は大紀元のスタジオに来る前に、浅草で在日チベット人の活動に参加した。沿道の人々の声を聞くと、応援の声は従来よりも増えていると感じた。いっぽう、政府が中国共産党の人権侵害を事実認定していないことには、忸怩たる思いだ。
ーー中国の対日工作が成功したとのことだが、実際にやりづらさはあったのか。
やりづらいと感じたことはないが、我が身に色々と降り掛かってくるものはある。私にとって、政治家でいるということは非常に大事だ。今は落選中で在野で活動しているが、情報の量などは議員の時と全然違う。
(中国人権問題などに取り組んだ)私の場合、結果として選挙戦が不利になった。中国と友好関係を結んでいる公明党の影響があったと思う。
私と中国に対する考え方が真逆な同僚議員や先輩の議員からいろいろな話を聞かされたことはある。それを妨害と受け取った印象はない。おそらく、(意志の固い)私には何を言っても無駄かと思われているのだろう。
(つづく)
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