長尾敬前衆議院議員インタビュー(1)から
ーー国を想うこころはどこからくるのか。
やはり親の影響が大きいかもしれない。私は父親が50歳、母親が40歳だった時に生まれた。父親は10人兄弟の下から2番目で、戦前に教育を受けた。大分の学校を卒業し、満州に渡り、電力会社に勤めた。
父親は領土を侵略される危機感を体験していた。今思えば父は私に色々なことを話してくれた。父は筆まめな人で、多くの文章を残してくれた。それを父が亡くなってから随分と読んだ。戦争で負けてからいかにして世界第二位の経済大国になったか、何を守ってきたのか。やはり親からの影響はあると思う。
ーー日本の経済界や教育界にも中国共産党の工作が入っているのか。
入っていると思う。お金儲けをするならばどのような悪にも手を染める。日本の財界すべてとは言わないけれども、ややそのような傾向がある。人権侵害の上に経済が成り立ってはいけないはずなのに、お金儲けが最優先になっている。
しかし百年前の日本人はそうではなかったはずだ。あの戦争に負けてから、軍隊についてはアメリカにゆだね、日本は経済最優先にするという吉田ドクトリンの方向性を取らなければいけなかったのは理解できるし、それしかなかったのだと思う。
でもそのまま今日に至った。途中では自国のことは自国でやる、自国の国防は自国で行うというところで、やはり舵をもう一回きり直さなければいけなかったところを、ずっと経済優先主義で来てしまった。私も民間出身だからビジネスをやったこともあるし、実はお金儲けが大好きだった。フェラーリに乗るとか別荘を持ちたいとか、ノートに書き溜めていたほどだ。
日本人が中国やロシアから悪影響を受け、おいしい話に誘惑され、だんだんと拝金主義に染まっているのに気づいた。お金儲けも大事だが、そこにはやはりルールや道徳、秩序がなければならない。
ーー日本の近江商人には三方良しの考えがあった。いまの日本の商人は持ち合わせているか。
三方良し(買い手よし、売り手よし、世間よし)という言葉をすぐに答えられる人もいないのではないだろうか。ちょうど渋沢栄一が紙幣に乗るので良いきっかけになると思う。
仕事ができるのも誰かのおかげであり、自分が行っていることが誰かにとってプラスになる。これこそが商いというものであり、それによって利益を得られる。やはり今は近江商人のような魂が抜けている状態だと思う。
ーーこのような日本の伝統的価値観を教育に応用することはできるか。
例えば私の地元で大阪府の寝屋川市では、地元の商工会議所が子供たちに夏休みのイベント企画として模擬の会社を作っている。会社が行う商売の内容や商品、資金の調達など本格的だ。お金を借りるときは利息を払わないといけないこと、そして返済期限までに返すことなども教える。模擬ビジネスのようなものを、夏休み期間中に長い時間をかけてやる。そうするとお店に並んでいる魚や寿司がどのようにして自分の手元に届いているか、その苦労を子供たちが知ることができる。
子供たちに勉強やスポーツをさせるのはもちろん大事だ。同時に父親と母親がいかにして家計を支えているのか、父親がどのように給料をもらい、どのように商売をしているのか、これらのことを知れば子供の親に対する見方も変わって来るだろう。子供の時に体験していることは大人になったら自分の子供にも体験させるもので、順番に受け継がれていく。昔は家でそのようなものを子供たちに見せていたと思う。姉が赤子の妹を背負って子守歌を歌っていた風景はもう今の時代は見ないだろう。やはりそのような機会を子供に作るのが親の責任でもあると思う。
(つづく)
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