戦後、日本の造船業は成長を続け、伝統的な海洋国家イギリスに代わって世界造船市場のトップであり続けた。しかし、現在は中国と韓国に追い抜かれ、第3位に転落した。四方を海に囲まれ、資源や原材料のほとんどを輸入に依存する日本にとって、造船業が衰退することは何を意味するのか。有村治子衆議院議員は26日の内閣委員会で関係省庁に問うた。
内閣府によると、日本は原油や鉄鉱石など主要な原材料のほとんどを海外から輸入しており、貿易の99.6%が海運を占めている。有村氏は日本の現状から「食糧、エネルギー、防衛力そしてこれらを支える科学技術といった国民の生存基盤に直接関わってくるのは海である」と指摘した。
国土交通省海事局の河野順官房技術審議官は、日本の船舶メーカーは環境性能では中韓と比べて高い技術を持つとした。いっぽう、中国は「中国製造2025」のなかで船舶を重点に置き、韓国では経営難に陥った大手造船に政府系金融機関から巨額融資支援を行うなど、「中韓は国家戦略として造船業の強化図っており、我が国の造船業は厳しい国際競争にさらされている」と述べた。
日本の周辺国が軍事力を強化するなか、造船業の安全保障上の役割についても取り上げられた。防衛装備庁の坂本大祐プロジェクト管理部長は、自衛隊の潜水艦や護衛艦、掃海艦などは日本の防衛に欠かせない重要な装備品であり、その建造と修理を担う日本の造船業は「防衛力を支える要素であるにとどまらず、防衛力の一部」であると強調。艦艇の生産技術基盤の維持、向上は今後も不可欠であるとした。
海上保安庁の矢頭康彦・装備技術部長は、海上保安庁ではすべて国内造船会社と建造契約を結んでいると説明。仮に自国で船を建造する能力がなくなれば、日本周辺海域をめぐる厳しい情勢への対応に支障が生じうると答えた。
有村氏は、国策として造船業を発展させ海洋進出を進める中国共産党政権に対して警戒感を示し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の中核をなす日本が健全で強靭な造船・海運の基盤を持ち続け、自由民主主義、法の支配、人権の尊重という普遍的な価値を先端技術を持って守り抜くことが、日本の国益であり、かつ世界への貢献だと確信する」と強調した。そして日本の造船業に対する政府の見解を問うた。
小林鷹之経済安全保障相は「経済安保の観点から造船・海運についてリスク点検を行なっている。講ずべき措置が明らかになれば必要な取り組みを進めたい」と述べた。
米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が4月に発表した報告書「軍艦の影で:外国企業が中国海軍の近代化にどう支えているか」によると、記録的な造船需要を受けて中国は世界から最新船舶を相次ぎ受注している。この動きに対し、民生用の最新技術が、中国軍の軍艦の建造技術として転用される恐れがあると指摘されている。
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