インド政府は4月末、リトアニアに代表部を新設すると発表した。中国から報復を受けるリトアニアとの関係強化の背景には、中国に代わる選択肢としての地位を確立しようとするインド政府の狙いがあると専門家は分析する。
27日に発表されたプレスリリースのなかで、インド政府は「リトアニアにおけるインド代表部の開設は、インドの外交拠点を拡大し、政治関係や戦略的協力を深めることになる。二国間の貿易、投資、経済活動の拡大や人脈の強化、多国間協議における持続的な政治的働きかけが可能となる」と記した。
ニューデリーに拠点を置くオブザーバーリサーチ財団のハーシュ・パント氏は、リトアニア代表部の新設は「インドの幅広い外交政策の目的の一部」と述べた。そして「昨年11月以降の中国とリトアニアの状況を考えると、インドも中国に対抗できると示すことを目的としている」と大紀元の取材に答えた。
リトアニアは、首都ビリニュスに台湾の代表機関である「台湾代表処」の開設を許可して以来、中国共産党からの圧力にさらされている。「台湾代表処」に外交的な地位はないものの、台湾の外国における代表機関として初めて「台北」ではなく「台湾」の名称を冠した。中国はこれに強く反発、リトアニアとの外交関係の格下げや輸入制限などの報復措置を講じた。
「リトアニア企業は中国で苦境に立たされており、インドはその代替となる可能性がある」とパント氏は述べた。「つまり世界経済において、インドは中国に代わるより信頼できる選択肢として、その地位を確立している最中にあると言える」。
さらに「中印関係は長い間、良好とはいえないものだった」とし、「中国がこの決定に憤慨するのは確かだ」と述べた。
インドのジャワハルラール・ネルー大学で外交を専門とするアビシェック・スリバスタバ助教授は、現在の地政学的状況において欧州諸国がインドに接近しているのは、同国が世界政治において責任ある国家であり、アジアにおける中国へのカウンターバランスとして機能することができるからだと指摘する。
「欧州諸国は中国の台頭を快く思っていない。中国は国際的な価値観を守ることができないからだ」と大紀元にメールで答えた。
バルト3国との関係を強化するインド
インドは現在、リトアニアに名誉領事(Honorary Consul)を置いており、エストニアとラトビアには外交機関を設置していない。そのため、大使館業務はいままで在ポーランドのインド大使館が担ってきた。
米国やロシアでの勤務経験を持つインドの元外交官アニル・トリグナヤット氏は大紀元の取材に対し、リトアニアに代表部を開設することは「EUとの連携強化の一環でもある」と回答した。インド政府はより多くの国々と関係を構築する意向を持っており、いままで外交上の出先機関を置かなかった国々での公館の開設を急いでいるという。
インド政府は、リトアニア代表部の新設を「前向きな一歩」と表現し、「国内生産と雇用の増強に直接的な影響を与えるだろう」と展望した。
ビベカナンド国際財団のトリグナヤット氏によれば、技術移転の促進、EUへのアクセス拡大などはインドにとって重要な優先事項であるという。また、EUの親インド的な外交政策が、リトアニアに新しい代表部を開設する決断を促したと付け加えた。
「特にロシアによるウクライナ侵攻で、インドが自国民の国外脱出を始めた際、この地域により強力なパートナーが必要であると認識した。両国は歴史的・文化的なつながりが強いため、インドにとっては文化から商業へと機会を多様化する好機となる」と述べた。
独訪問中のモディ首相は2日、ショルツ首相との首脳会談後の記者会見で、2国間協力に向けて今後数年間に計100億ユーロ(約105億1000万ドル)を拠出することを明らかにした。インドは軍事機器の大部分をロシアから調達している。
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