オーストラリア総選挙に立候補した中国系新人、李復新氏は、過去10年間に中国の複数の統一戦線組織で要職に就き、中国政府の海外プロパガンダに関与していたことが判明し、物議を醸している。豪メディアが報じた。
統一戦線組織とは、国内外でプロパガンダを担う中国共産党組織である。オーストラリア放送協会(ABC)は16日、李氏が過去10年間に中国の少なくとも6つの省の統一戦線系政府機関で要職を歴任し、中国当局と密接な関係にあると報じた。
李氏は1990年代にメルボルンのモナシュ大学で教育学の博士号を取得し、2003年にキャンベラに豪現代中国語学校(ASCC)を設立した。
ABCの報道によると、15年、李氏は中国華僑国際文化交流協会(ICEA)の役員と、国際中国語教育学会(ISCLT)の執行委員3人のうちの1人にも選ばれた。この2つの組織は、在豪中国大使館、中国共産党中央統一戦線工作部の指示を受けており、役員の人選はその認可が必要。
ABCによると、19年に李氏の学校が中国政府から資金援助を受け、中国共産党の文化宣伝イベント「中国文化キャンプ」を開催した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、李氏の選挙用Facebookファンページと電子メールを通じて事実関係を問い合わせしたが、回答は得られなかった。
2年前に李氏が豪地方選挙に立候補した際も、豪メディアは同氏が中国共産党中央統一戦線工作部に所属していたことを報じた。
報道によると、李氏が所属している団体の多くは、中国大使館や本土の中国共産党機関の「指導」を受けている。
李氏はこの問題について沈黙を保っている。
中国共産党の政界への浸透は今回が初めてではない。香港出身の豪下院議員シンディ・リャオ氏には中国のスパイであるという疑惑説がつきまとう。隣国のニュージーランドでは、中国出身の国会議員ジャン・ヤン氏が、中国の軍事学校が養成したスパイであることが国際メディアで暴露され話題となった。
チベット亡命政府の駐台湾代表、ケルサン・ギャルツェ氏はRFAのインタビューで、「中国政府は政治・経済の両面で、国際社会に浸透する周到な計画を立てている。中国政府のバックアップを受ける政治家は資金調達能力が高く、欧米の政治に参入すれば、対中政策に影響を与えるのは必至だ」と懸念を示した。
無所属で豪上院選挙に出馬した李氏は21日に行われた選挙で落選した。
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