中国の経済状況は、ますます不安定になってきている。昨年、中国共産党はインターネットプラットフォーム企業に対する規制を強化し、中国経済の見通しを悪化させた。ゼロコロナ対策による行動制限、消費者・企業マインドの萎縮、地政学的な不確実性などから、景気後退のリスクが顕在化しつつある。
グローバル企業は、中国市場戦略を評価し、将来の経済的リスクに備える必要がある。特に、産業資材メーカーや高級小売店など、この世界2位の消費市場に依存している企業は、引き続き警戒が必要である。
中国経済は2022年に入ってから、すでに大きく減速している。中国経済の中心地である上海や深センを含む数十の都市で、当局がロックダウン (都市封鎖) を実施し、工場の操業や経済生産に支障をきたしている。一部の経済学者は、当局がこれらの措置を緩和することを期待していたが、中国共産党はその期待に応えず、ゼロコロナ政策に固執している。
5月上旬の政治局会議で習近平指導部は、引き続き全国で「ゼロコロナ」政策を強化すると明言した。最高指導部である共産党政治常務委員会は、新型コロナウイルス(COVID-19、別名「中共ウイルス」)を「あらゆる手段と努力で阻止する」と述べた。そして、経済学者たちが最も懸念しているのは、おそらく中国共産党が経済対策や被害抑制策について何のコミットメントもしていないことだろう。
中国の公式発表では、2022年の国内総生産(GDP)の成長率は5.5%と予想されていたが、今では予測不能となった。
先行指標は差し迫った被害の大きさを示し始めている。4月、中国のサービス業はパンデミックの初期段階である2020年2月以来、最も速いペースで縮小した。
中国メディア「財新」の4月の中国サービス業購買担当者景気指数(PMI)は36と前月の42から下落し、4カ月連続の下落となった。PMIが50を超えるとサービス業が拡大している事を示すため、36は深刻な収縮を意味する。
製造業のもう一つの経済指標である財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)も3月の48から4月は46に低下した。これは20年2月以来最大の減少幅で、工場受注の鈍化を表している。現在進行中のロックダウンがその主な原因である。
経済の見通しが暗いため、中国共産党は支援の意向を示している。その一つが、中国国務院(内閣に相当)が最近打ち出した付加価値税控除などの企業向け税制優遇措置である。もう一つの緩和策として考えられるのは、技術分野への支援である。
「プラットフォーム経済」への規制を数カ月にわたって宣伝してきた国営メディアは、やや控えめな姿勢に転じている。最近の報道では、当局がネット業界の「健全な発展」を促すために、インフラ整備の促進や物流支援の強化に向けた取り組みを発表したと伝えている。
おそらく中国政府は、国内で厳しいロックダウンを行っている状況で、「デジタル・プラットフォーム」が消費者の生活の質の向上に役立つことを認識しているのだろう。
中国官製メディア「経済日報」の最近の一面社説は、テクノロジー企業への政策転換を示唆している。社説は、20年初頭から始まった過剰な規制措置の収束を告げ、今後は「ルールと市場運営」に基づいて規制が行われることを発表している。
一方、中国の李克強首相も最近、輸出産業への支援を表明している。これには、中央政府による海外受注確保、人民元相場の安定化、倉庫・在庫融資の拡大などの取り組みが含まれている。
しかし、不動産セクターは当面回復の見込みがない。中国の多くの都市で住宅取得の規制が解除されたにもかかわらず、4月の住宅販売戸数は前年同月の半分以下にとどまった。
上海の大手国有メディアグループ傘下の英字経済ニュース「Yicai Global」は、上位100社のデベロッパーによる4月の売上高が前年同月比59%減、前月比16%減少したと報じた。景気減速とCOVID-19規制の継続が、消費者の借入と消費意欲を損ねている。
中国で大規模な事業を展開するグローバル企業は、すでに危機感を抱いている。最近の景気刺激策にもかかわらず、高級品部門は今後も縮小を続けるだろう。
億万長者や共産党幹部に対する汚職の取り締まりは今後も続くと予想されるからだ。専門家は、高級品の需要がさらに落ち込むと予想している。
執筆者プロフィール
ファン・ユー(Fan Yu)
金融と経済の専門家で、2015年から英文大紀元に中国経済の実態を分析した記事を寄稿している。
オリジナル記事:英文大紀元「Chinese Economy Enters the Danger Zone」
(翻訳編集:王君宜)
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