7月の参議院議員選挙で、中国出身の帰化女性が国政政党からの出馬を発表していたが、4日後には公認取り消しとなった。公認発表後に中国共産党組織との関係を指摘する声が相次いだことが背景にある。
諸派政党・NHK党が27日の記者会見で公認を発表した原田優美氏だが、30日には同党から取り消しが発表された。中国国内メディアや自身の公開情報によれば、中国政府および中国共産党の政策を推進する事業に携わってきた。中国共産党福建省委員会宣伝部が管理するウェブメディア「東南網」の日本支局長のほか、福建省政府系組織の役職を8つ抱えている。
同氏の略歴を紹介した中国大手ポータルサイト「搜狐」の記事によれば、広域経済圏構想「一帯一路」を日本で実践するために東京で一般社団法人を設立。21年6月には福建省で開かれた華僑向けの一帯一路ビジネス研修会にも参加し、「祖国中国の経済発展を深く理解し誇りに思う」「一帯一路の建設に積極的に身を投じる」と語ったと東南網は伝えている。
中国共産党組織に近い在外華人が選挙に立候補したり、実際に議員になる例は他の先進国でもみられる。
5月のオーストラリア総選挙に立候補した中国語学校校長・李復新氏は、少なくとも7つの中国共産党組織で幹部を務めていたことがABCニュースによって報道されていた。同氏は今回の選挙では落選している。
カナダのビクター・オー上院議員は、中国共産党の政策を支持する組織やメディアとの関係が指摘されている。上院の倫理・利益相反委員会は20年2月、費用をすべて中国側が賄う中国出張について情報開示しなかったとして、オー氏と他2人の上院議員を非難した。
オー氏の政治イベントに代表が出席する在カナダ華人組織(CPAC)は中国中央委員会中央統一戦線工作部の下部組織の一つである華僑事務弁公室から、優れた華僑団体として表彰されている。この弁公室は今年初め、カナダ連邦裁判所から「カナダの利益に反するスパイ行為に関与」していると判断されている。
ニュージーランドでは2017年、中国出身の国会議員・楊健氏が同国安全情報局からスパイ容疑で捜査を受けた。フィナンシャル・タイムズによると、楊氏はかつて中国の軍事学校で教職に就いていた。楊氏は2020年に政界を引退した。
オーストラリアにおける中国共産党の浸透工作について2冊の書籍で著したチャールズ・スタート大学のクレイブ・ハミルトン教授は、前出の李氏の立候補について「立候補する完全な権利を持つものの、中国政府や中国共産党と密接に繋がっていることについて有権者には知る権利がある」とABCのインタビューに答えている。
中国共産党は大使館や在外華僑組織などを通じて華人を利用し、党政策の実現にプラスになるよう政治、マスコミ、社会に影響工作を図る。これは「政治闘争」と位置付けられ、統一戦線工作部が率いている。
米シンクタンクの「戦略予算評価センター」が2018年5月に発表した報告書によれば、中国共産党は在外華人に民族の帰属意識や古くからの華僑の価値観に働きかけ、中国共産党の指導体制への忠誠を維持するよう工作を施している。
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