「私は台湾人」「私はチェコ人」ー。こう述べると、議場はスタンディングオベーションが巻き起こった。台湾立法委員代表団を率いてチェコを訪問した游錫堃(ユウ・シャクコン)立法院長は20日、チェコ上院議場で演説した。中国共産党を念頭に、自由と民主主義の価値を守るため「不正義に沈黙してはならない」と語った。
台湾からの欧州訪問団はチェコ、ポーランド、リトアニア、フランスなどを18日から27日にかけて巡っている。
中国共産党によるチェコの圧力が高まった2020年、ビストルチル上院議長が代表団を率いて台湾を訪問した。游錫堃氏は、国交を結ばない国の現職議長が台湾の立法院議場で演説するのはビストルチル氏が史上初めてだったと明かし、「ビストルチル氏は春の使いのようだ。国際空間に台湾を誘う春の祝詞を届けた」と述べた。
ビストルチル氏は、2020年1月に心臓発作で急逝したヤロスラフ・クベラ前議長(故人)の後任。当時クベラ氏は台湾訪問をめぐって、中国大使館から脅迫的なメッセージを受けとっていたという。現地メディアによれば、チェコ企業に制裁を加えたり、貿易制限を課したりすることを中国側からほのめかされていた。ビストルチル氏にも中国共産党からの圧力が続いたが、これを排し、同年8月にチェコ企業幹部らと共に訪台を敢行した。
游錫堃氏は演説で、「チェコと台湾は万里ほど遠く離れ、文化、宗教、地理も異なるが、台湾は常にチェコを長年の旧友のように思っている。それは私たちが同じ言語を話しているからではないか。この言語は『民主』と呼ばれる」と語った。
「私たちは必ず中国共産党政権の本質を深く研究し、理解しなければならない」とも強調した。好戦的な戦狼外交や、プロパガンダを拡散する孔子学院、広域経済圏構想の「一帯一路」、香港「一国二制度」の反故、台湾に対する「主権と管轄権を持つ」といった党の主張を並べた。
「もし我々が不正義に沈黙を続け、侵略行為を黙認すれば、危険な力は世界を蝕み、民主主義を後退させることになる」「私は『真理必勝』を信じている。民主と自由は必ず最終的な勝利を得る」と力説した。
最後に、游錫堃氏が2年前にビストルチル氏が台湾立法院の議場で語った「私は台湾人」になぞらえて、「私も皆さんに誇らしげに申し上げたい。私は台湾人。私はチェコ人。なぜなら私たちは皆『民主の人』だからだ」。こう述べると議場のチェコの議員からは拍手喝采が巻き起こった。
チェコ上院では同日、台湾とチェコの相互関係を推進する決議案が賛成多数で可決した。台湾からチェコに対する直接投資が2万4000の雇用を創出し、半導体や人工知能、文化交流などの領域で両国が連携を強めることが盛り込まれた。
決議を提案したフィッシャー上院議員が游氏に議案に直接手渡し、台湾への支持を示した。
チェコは他のEU諸国と同様に「一つの中国」政策を維持するものの、ペトル・フィアラ現政権は施政方針の中でアジア太平洋の民主主義パートナー、とくに台湾との関係を深めると記している。
フィッシャー氏は、台湾には議会、政府、総統、法律、司法、通貨、領土、そして伝統があり、游氏の演説内容にあるように、台湾とチェコは「民主」の概念を共有している、と述べた。
游錫堃氏率いるチェコ訪問団はクベラ前議長のベラ夫人と面会し、「強権に怯むことのない自由を愛する偉人だった」と故人の功績を称え、夫人に花束を贈呈した。
游錫堃氏のチェコ訪問と演説に中国大使館は強く反発し、声明でチェコに対して「一つの中国の原則」を支持するよう求めた。プラハ・ラジオ・インターナショナルによると、フィアラ首相は「チェコは独立国家であり接する相手を選ぶ自由がある」とこの批判を一蹴した。
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