米国に本部を置く国際人権団体「フリーダムハウス」は8日、最新報告書『中国のグローバル・メディア影響力2022』を発表した。報告書は、中国政府が過去3年間「より洗練された、より隠密的かつ強引な」手法で、各国のメディアに影響力を強めようとしていると指摘した。
2019年から21年12月にかけて行われたこの調査で、30カ国のうち16カ国で中国は影響力を強める取り組みの強さが「強い」、または「非常に強い」と判明。また、18カ国のメディアに対して中国側は取り組みを強化している。
中国政府とその代理人は「より洗練された、より隠密的かつ強引な」手法で、メディアの主張や論述を形成し、中国を批判する報道を抑圧している、と報告書は批判した。
過去3年間、中国は世界の主流メディアを通じて、中国支持の報道を広範囲に行っているという。報告書によれば、中国に批判的な報道を行うメディアに対し「嫌がらせ、どう喝」をするほかに、中国政府にとって有利な虚偽情報を広めるために「ネットいじめや偽のSNSアカウントの利用」などの戦術をとっているという。
しかし中国の取り組みは、独立系メディア、市民団体の活動、報道の自由を保護する各国の法律によって抑えられている。各国は透明性を高め、多様な報道を確保し、中国に関する専門性を高めることによって中国の影響力に対応している。
いっぽう、中国のメディア影響力に対抗する各国の能力に驚くほどの差があるという。調査対象国の半分は中国に対抗する力が「強い」が、残りの半分は「弱い」という結果になっている。なかでも、中国の影響力を最も強く受けているのは台湾だが、最も強力な対抗策を講じたのも台湾だ。その次は米国だ。ナイジェリアが中国のメディア影響力工作に最も弱い。
報告書は、台湾、米国、英国、豪州の事例を挙げ、中国は穏健的なアプローチで望ましい結果が得られなかったため、近年「より攻撃的、より卑劣な」策略に変えたとした。
この傾向は、今後数年間で多くの国に広がるという。報告書は近い将来、多くの国の政府、研究者、ジャーナリスト、政治家が「より多くの外交的脅迫、ネットいじめ」や「中国政府に雇われたインフルエンサーによる世論工作」に直面すると警告した。
台湾に関して、報告書は台湾市民が中国のプロパガンダへの反発を強めているにもかかわらず、中国はニューメディア戦略を通して台湾社会の分断を図り、台湾の外交関係にダメージを与えることによって台湾政府に揺さぶりをかけている、と指摘した。
中国は、共同制作、コンテンツ共有契約、記事広告を通じて中国政府が作成したコンテンツを各国のメディアに掲載する。一部のコンテンツは中国政府が作成したものだと明確に示されていない。
中国はまた、人権弾圧などの問題に関して中国寄りの報道や投稿を増やすために、各国のメディアやインフルエンサーに中国訪問するための資金を提供している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。