感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策から急遽、日米欧が取り入れる「ウィズコロナ」政策へと転換した中国では、感染急拡大に伴う医療崩壊の懸念が浮かび上がる。死者数も増加し、火葬には数日間待機しなければならないとの情報もある。
北京市の衛生当局幹部は12日、「北京市内の発熱外来患者数は1週間で16倍に、救急車の要請件数も通常時の6倍に増えた」と明らかにした。
北京の街 人の姿はまだみえない
封鎖措置緩和以降も、北京の街には活気が戻らない。13日、朝のラッシュ時間帯の地下鉄駅構内を捉えたという動画がSNSに投稿された。閑散としており、撮影者を入れても3人しかみかけない。
皮肉なことに混雑が見られるのは病院の発熱外来だ。北京市民が撮影した動画には入り口周辺に長蛇の列ができた。市民によれば、市内の病院はやむを得ず「発熱外来の診察を停止した」という。
国家衛生健康委員会は14日、国内では多くのPCR検査の強制が行われなくなったため、公表数は実態を反映していないと認めた。また、感染状況を把握することは「不可能」であるという。
病院内での集団感染も報じられている。人手不足に陥る現場では、医療従事者は感染しても無症状であれば出勤を強いられ、医学生も駆り出されている。国家衛生健康委員会は、引退から5年以内の医師の再雇用を提案した。
ある北京市民は米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、「高齢の親が重症になり、助けを求めたが、電話の待ち順番は4000番以降だ」と述べた。
北京救急センター(120番)の交換手は通報の多さを窺わせた。「救急車待ち人数は40人以上。朝7時に救急車を呼んでも、昼1時過ぎでも到着できない状態だ」
北京市中医薬大学東方病院の職員は13日、自身のSNSウェイボー(微博)で、「火葬には少なくとも5日から7日待たなければならない。遺体保存が深刻な問題」だと書き込んだ。市民が投稿した動画には、火葬場の前の沿道に並ぶ長い車列が映されている。
ゼロコロナ緩和後の感染拡大により、死者は100万人を超えるとの予測もある。復旦大学の研究者たちは3月、ワクチン接種率に基づき160万人が死亡すると推定した。英国の健康リスク分析会社エアフィニティは、最大210万人が命の危険にさらされるとした。
米国とドイツの中国大使館、ビザ手続き停止
新型コロナ感染拡大により、米国とドイツの駐中大使館は通常のビザ手続きを全面的に停止すると発表した。
北京の米国大使館は15日、北京の大使館と上海の領事館は通常のビザ手続きを停止し、パスポートや緊急領事サービスのみに制限する。感染者急増による業務の影響を考慮したという。広州、武漢、瀋陽の領事館も緊急対応に限定する。
16日にはドイツ大使館もビザ手続きと領事窓口を同日から来年1月6日まで停止すると発表した。
パトリシア・フロール駐中国ドイツ大使は15日、北京で開かれたドイツ商工会議所における講演で、中国の医療体制の不整備に懸念を示し「さらなる混乱が起こりうる」と述べた。また、人々に準備させる余裕を与えることなく、中国共産党が急な政策転換を行ったと批判した。
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