日本に在住している中国人男性は最近、大紀元の取材に対し、中国地方政府が日本を含む国外に展開する非公式の海外警察署からスパイ勧誘を受けたと語った。
中国海外警察署(以下、海外警察)の存在は、スペインの人権団体「セーフガード・デフェンダーズ」が9月に発表した報告書により明らかにされた。福州市や南通市など複数の地方政府が世界各地に設置し、反体制派人物の監視や追跡、本国に強制帰国させる活動の拠点になっているという。
報告書によれば、中国海外警察は「中央統一戦線工作部」とも関連があるとされる。日本や米国、英国、ドイツ、スペイン、カナダなど30カ国に渡り数十カ所にある。日本には東京や名古屋、福岡などに設置されている。
日本で不動産業を営む中国人男性の石明さん(仮名)は、日本国内の中国海外警察の被害者の一人だ。「警察官」は繰り返し石明さんに接近し、脅迫や仕事の妨害をした。最後には巨額報酬を提示してスパイ活動に勧誘したという。
悪口で引き離し 巨額資金で誘う
1月13日、石明さんは大紀元の取材に対し、「2回目に(中国海外警察が)来たときは、すでに私の人生に影響があった。当時交際していた彼女が怖がって別れたがっていた」と語った。
3回目は12月16日だった。東京の新宿で中国海外警察署の警官4人に囲まれ「話をしよう」と言われたという。「よくない雰囲気を感じとったので『忙しいのでまた今度』と断った。そのうちの一人が『(自分達は)どこらか来たのかわかるだろう』と凄んで、私の携帯電話を取り上げた。彼らは私が録画することを恐れていた」。
3回目の時、石明さんは仕事上のパートナーとの意見の食い違いが生じていたという。「警察は挑発的な言い方で(パートナーの)悪口を言い続け、『私への提案だ』と言って、一緒に活動するよう求めてきた」
「私が黙っていると、『ビジネスを続けながら、うちでアシスタントをしないか』と報酬を掲げた。その場で断ると、より『直接的な協力』として年収1600万元(約3億円)を提示してきた」。
石明さんは日本に事務所を2か所持っている。「中国国家保安警察は、私の情報をすべて把握している。私をスパイにさせるため、前妻に30万元を渡して、私の子供を中国に残すよう脅した」と石明さんは話した。現在まで子供に会えていないという。
「その日の夕方6時、重慶市公安局からウィーチャットで連絡があり、『海外で(反体制的な)活動に参加しなくてよかったな』と言われた。声をかけられたのはこれで4回目だ」。
日米欧など実態解明へ
日本国内に設置されている中国海外警察署について、日本政府は懸念を示し、実態解明を進めると表明した。
林芳正外相は昨年11月29日の記者会見で、外交ルートを通じて中国政府に懸念を伝えたことを明らかにした。「仮にわが国の主権を侵害するような活動が行われているということであれば、断じて認められない旨の申し入れを行っている」とし、関係省庁とも連携して対応する考えを示した。
また松野官房長官は12月22日の会見で、中国海外警察署について実態解明を進めていくとした。「すべての必要な措置をしっかりと講じていく」と述べ、「中国側に日本の主権を侵害するような活動は断じて容認できないという日本の立場を明確に説明していくことは極めて重要だ」と強調した。
米国では昨秋、連邦捜査局(FBI)がニューヨーク・マンハッタンの中国海外警察署を犯罪捜査の一環として家宅捜査し、資料を押収していたことが米紙ニューヨーク・タイムズの報道で明らかになった。
レイFBI長官は11月、上院安全保障委員会の公聴会で、中国が法外的に海外警察署を設置することは米国の主権侵害にあたり、米国内における中国の警察署の存在を把握していると強い懸念を示した。
欧州では昨年10月、アイルランド外務省は「アイルランドで順守すべき国内法、国際法に従っていない」として、首都ダブリン市中心部にある中国警察拠点の閉鎖を命じた。11月、オランダ外務省も「違法」とし、閉鎖処分を下した。
このほか、英国やカナダ、ドイツ、イタリア、スウェーデンなど十数か国の政府が調査に乗り出している。
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