動画共有サイトTikTok(ティックトック)で、「70万平方メートルの日本の島を買った、永久所有権を手にした」と語る中国人女性の動画が物議を醸している。
無人島は以前、競売にかけられていた沖縄本島から程なく近い無人島、屋那覇島(やなはじま)とみられる。米国では中国企業の民間の土地購入を規制する動きが加速する中、日本での土地購入には安全保障上の問題に温度差が生じている。
動画は2日に公開された。30代だという女性は、南国らしき島を背景に自撮り動画を撮影している。中国国内メディアの取材に応じた女性は、山東省青島市出身で親族が不動産業と金融業を営んでいるという。2019年、モルディブやタイにリゾートを構える英企業との関係で、競売にかけられていた日本の無人島の存在を知ったという。
日本の競売・公売情報の記録によれば、那覇地方裁判所名護支部が管轄し、2020年に初めて情報公開した屋那覇島の記録がある。2021年3月に再び売却基準価額 1,461万円で公示がされたが取り下げとなった。
屋那覇島を管轄する沖縄県伊是名(いぜな)村によれば、屋那覇島には以前は住民がいたが現在は全員島を離れたという。競売では、民間が所有する900件あまりの物件のうち700件余りがまとめて掲載されていた。土地の用途を示す地目(ちもく)は「原野」となっており、70万平方メートルのうち37万平方メートルが競売の対象だった。
同村は今年3月発表の国土利用計画を公表している。屋那覇島について「自然環境を保全しつつ有効活用を図っていく」とだけ説明する。売却等には触れていない。
島、3年前に東京の企業が購入
TikTokの動画に登場する女性は「会社名義で島を購入した」と主張する。実際、屋那覇島は、東京都港区に住所を置く不動産投資及びリゾート開発、中国ビジネスコンサルティング会社が2021年に取得している。同社は中国の青島市にグループ企業として飲食関係企業を持つ。
政府は、国境離島や防衛関係施設周辺等などを安全保障上のリスクにあたるとして、管理や購入に際して必要な措置を講じるべきと定めた「重要土地調査法」を制定した。しかし全面施行は昨年9月で、この屋那覇島の購入契約時期は2020年だった。
米国では、民間企業を含め中国資本の土地購入に関する規制を州政府レベルで強化している。最も知られたケースは、グランドフォークス空軍基地に近いノースダコタ州の農地を中国の化学調味料メーカー・阜豊集団がトウモロコシ製粉工場プロジェクト用に購入を試みた例だ。ボチェンスキー州知事は1月31日、連邦政府の要請を受けて計画を拒否すると表明した。
住民や議員の警戒心も高まる。サウスダコタ州やフロリダ州など複数の州が同様に敵対的国家の個人や組織の土地買収を規制する動きがある。国家安全保障分野の専門家は、中国が土地を買収することで、中国共産党が重要インフラを破壊したりスパイ活動を強化したりする恐れがあると指摘している。
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