焦点:中国、高高度気球の軍事利用に強い関心

2023/02/07 更新: 2023/04/24

[北京 6日 ロイター] – 米中両国は中国の偵察気球が米国の本土上空を飛行した問題を巡り対立しているが、研究者の論文など数十件に上る中国側の資料からは、中国が高高度気球技術の軍事目的での利用に関心を強めている様子がうかがわれる。

中国外務省は米本土上空を飛行した気球について、「研究用であり飛行コースを外れた」と繰り返し主張している。しかし中国の軍事研究者は最近、一般に入手可能な論文で、気球の開発を進め、特定の作戦向けに配備すべきだと主張している。

「特殊飛行体」を研究する人民解放軍の研究機関が昨年4月に発表した論文は気球について、「敵の防空システムを誘発・稼働させることができ、電子偵察の実行のための条件や、防空システムの早期警戒検知の評価、作戦対応能力を測ることができる」と指摘。敵の防空体制に対するテスト機能が軍事的有用性の一つだと主張した。

この論文を含め、人民解放軍の管理下にある出版物などいくつかの資料から、中国軍部が米国など諸外国における過去の気球軍事利用の研究に強い関心を持ち、この分野の格差を縮めようとする明確な意図を持っていることが読み取れる。

米政府関係者の中には、中国はスパイ衛星網など敵国の情報を収集するより洗練された手法を持っているとの見方があるが、人民解放軍の論文は気球の使用コストは低く、それが配備を増やすべき理由の一つだとしている。

この論文は信号妨害や電子戦などのテーマを扱う専門誌に掲載されたもので、「地上防空システムによる航空攻撃部隊への脅威の増大に対応するため、コストの低い気球を使って能動的・受動的な妨害活動を遂行、敵の防空早期警戒システムを効果的に抑制し、航空攻撃部隊の任務遂行をカバーする必要がある」と論じた。

また「気球に関して外国との差を縮め、中国がこうした兵器によって攻撃されるのを防ぎ、わが軍の攻撃能力を強化するために、関連する作戦上の課題について研究を積極的に進めるべきだ」と訴えている。

地域安全保障アナリストの間には、気球は中国のミサイル計画に役立つ成層圏のデータを集めたり、人工衛星で得られる情報を補足するための高解像度写真の撮影に使用したりすることも可能だとの声もある。

<技術購入>

中国の軍部と国の研究機関が過去2年間に高高度気球と関連技術を購入していたことが、ロイターによる政府入札資料の分析で明らかになった。

中国科学院(CAS)傘下の空天信息創新研究所は気球に関心を示す国家機関の一つで、中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントで高高度気球に関するテーマを頻繁に発表している。

多くは宇宙開発や気球の空気力学に焦点を当てているが、気球の過去の軍事利用を分析したものもあり、他国が気球の脅威からどのように自国を防衛したか、どのように攻撃的に使用されたかも取り上げられている。

昨年4月には「新型偵察気球がイスラエルの空を防衛」という記事が掲載された。

CASは昨年9月、政府の入札で別部門向けに「成層圏気球プラットフォーム」の開発を316万元(約6150万円)で受注。その1カ月後には飛行高度30キロ、重さ1.2トンまでの気球の実験に成功したと発表した。

CASのウェブサイトに掲載された記事によると、このテストはCASにとって宇宙技術を開発する優先度の高いプロジェクトの一部と位置付けられていた。いずれのプロジェクトも軍事的応用についての言及はない。

CASは国防プロジェクトの技術面での飛躍的進歩を支援することが主な任務の一つとなっている。

(Eduardo Baptista記者、Greg Torode記者)

Reuters
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