福島漁業協同組合連合会(福島魚連)は7日、福島県いわき市沖で取れたスズキの体内から基準値を超える放射線物質を検出したと発表した。かねて東京電力福島原発事故と処理水海洋放出の影響を注視してきた中国メディアも、軒並み報じた。いっぽう、中国側の放射線基準値は日本の16倍で、食の安全基準は日本よりもはるかにゆるいことがわかった。
福島魚連の通知を受け取った福島水産海洋研究センターは、同海域のスズキを検査したところ、組合の基準値1キロ50ベクレルを上回る、1キロ85.5ベクレルのセシウム137が魚の体内から検出された。国の基準値(同100ベクレル)は下回るが、同県沖のスズキの出荷を自粛する。
中国中央テレビ(CCTV)をはじめとする中国国営メディアは、日本産スズキの放射線濃度が基準値を超過したことや、輸入の一時停止について報じた。今年予定された福島原発の処理水の海洋放出によって「海産物へのさらなる影響」を関連づけようとする報道も多数みられた。
こうしたなか、一人のネットユーザーが中国当局の規定する放射線基準値を調べたところ、12種類の食品に設定されている基準値は日本よりもゆるく、肉・魚介類についてはセシウム137の濃度が1キロあたり800ベクレルに設定されていると指摘した。
改めて大紀元が調査した結果、中国共産党衛生部が定める「食品中の放射性物質に関する基準値の設定」では、放射性物質セシウム137の基準値は1キロ毎800ベクレルに設定されていたことが判明した。これは、日本のスズキから検出された放射線濃度の9倍、福島魚連が定める基準値の16倍に値する。
中国共産党当局の整合性に欠く主張は食品の安全基準に限らない。日本が21年4月、東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出することを発表したところ、中国共産党は強く反発。外交部の趙立堅副報道局長(当時)は「海はゴミ捨て場ではない」と記者会見で言い放った。
いっぽう、現在49基の原発を擁する中国も処理水の海洋放出をおこなっている。中国当局は毎年の放水量を公開していない。
香港メディア・衆新聞によれば、深圳市の大亜湾原発では放射性物質トリチウムの年間放出量の上限を225兆ベクレルと福島原発より10倍以上も高く設定しているという。数値は中国生態環境部の2017年の承認文書に基づく。
東日本大震災で被害を受けた東京電力の福島第一原子力発電所は運行を停止し、政府は廃炉に向けた施策を進めている。IAEAなど第三者機関の査察を経て、2021年4月、120万トンの処理水の海洋放出を決定した。今年の春から夏にかけて、地域関係者の理解を得たのち放出を開始する予定だ。
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