中国の人気セルフメディア配信者・戸晨風(こ・しんぷう)が、ついに官製メディアから公開処刑を受けた。
11月5日放送の国営テレビ「法治オンライン(法治在線)」は、戸晨風を名指しで批判し「社会の対立を煽り、群衆の感情を操作している」と断じた。事実上の「思想犯」として断罪に、国内外から波紋が広がっている。
同アカウントはこれまでにも当局により計5回削除・封鎖されていたが、国家放送での名指し攻撃は初めて。SNSでは「今回は完全に終わった」と落胆する声の一方で、「彼の罪は何だ」と怒りや疑問が噴出している。

戸晨風は、中国社会の格差と貧困をテーマにした動画で知られる。
「各国の1日分の給料でスーパーで何が買えるか」シリーズや、月100元(約2千円)の年金で暮らす高齢者を取材した映像など、庶民の実情を淡々と伝える内容が多かった。政治的発言はほとんどなかったが、貧困や格差を映すこと自体が「体制批判」と見なされた。

今回、CCTVが問題視したのは、戸晨風の「アップル人とアンドロイド人」発言。彼は「アップル人はエリートを象徴し、アンドロイド人は庶民を象徴する」と語ったが、これが「階級対立を煽動する」として断罪された。現在、中国のSNSでは「アップル人」「アンドロイド人」という言葉自体が検閲対象となり、投稿は次々と削除されている。
それでもネット上では、戸晨風への公開処刑を「真実を語った証」と捉える声も多く、彼が受けた不公平に世論は怒りを募らせている。「ここまで言論が締めつけられるようになったのか」と落胆する声も相次ぎ、中国社会に広がる沈黙と恐怖の空気を象徴する出来事となった。
一方で、彼の封殺は海を越えて波紋を広げている。
9月に戸晨風のSNSアカウントが一斉に削除された直後から、世界各地のアップルストアで華人客らが展示中のiPhoneの壁紙を彼の写真に差し替える「デジタル抗議」が広がった。
これは、封殺された戸晨風への支援であり、中国当局の検閲に対する静かな抵抗を象徴する動きだった。


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