中国の大学で、学生へのネット監視が急速に強まっている。政府が掲げる「国家安全」の名のもと、発言や思想までもが統制されつつある。
9月の新学期以降、各地の大学が「国家の安全と情報保護」を理由に、学生や教職員のネット発言を厳しく制限し始めた。VPN(海外サイトに接続するためのツール)の使用は禁止され、政府や共産党への批判は「国家機密の漏洩」とみなされ、処分の対象になる。
さらに、一部の学校では「批判的な投稿を見つけたら報告せよ」と指示し、友人の「問題発言」を学校に通報させる制度まで導入している。
VPNとは、インターネットの通信を暗号化し、検閲を避けて海外の情報にアクセスできる仕組みのことだ。中国では世界のニュースやSNS(X=旧ツイッターなど)を見るためのほぼ唯一の手段だが、当局はこれを「違法」として取り締まっている。
いまやキャンパスでは、いつ、誰に発言を密告されるかわからない緊張が漂っている。
「学校で起きた事件や、誰かが自殺したことをSNSに書くのも『国家機密の漏洩』だと言われる。本当のことを話すだけで罪になる。毎日、口を閉じて生きるしかない。息が詰まりそうだ」と、学生たちは嘆いた。
監視の対象は学生だけではない。大学院生のネット使用状況は指導教員が報告し、教室には監視カメラが設置され、教師の発言までもチェックされる。
浙江(せっこう)省ではすでに2018年から、授業中の発言や学生の表情をAIで分析する「行動管理システム」が導入されており、こうした動きは、重慶や上海など全国の大学にも広がっている。
表向きは「ネット安全教育」だが、実態は徹底した言論統制である。
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