ワクチンをめぐって リスクと予防を概観して

ブースター接種が脳卒中を誘発する可能性=CDCとFDAの共同声明

ファイザービオンテック製ワクチンがもたらす深刻な副作用は、胸部症状だけではなかったようだ。先月、米国の政府機関が脳卒中のリスクについて示唆した。はたして、接種からどのくらい経って発症するのか。インフルエンザワクチンとの同時接種の影響はあるのか。私たちはどのように身を守ればいいのか。

要点

・米疾病対策予防センター(CDC)と米食品医薬品局(FDA)の共同声明によると、ファイザー社の新型コロナ2価ワクチンに脳卒中のリスク増加が確認されたという。

・65歳以上の高齢者における発症時期はブースター接種後1〜21日で、なかでもブースター接種後11〜21日に大量の症例が確認された。

・上記のうち64%が、新型コロナワクチンのブースター接種と同日にインフルエンザワクチンの接種を受けていた。

・2価ワクチンのブースターはスパイクタンパク質の遺伝情報を含んでおり、血栓リスクの上昇に寄与している。高リスクの人はブースター接種を避けるべきである。

・解決策として、脳卒中の警告サインとなる5つの 「急変 」を覚えておこう。

・本稿では、脳卒中の他の危険因子を予防するためのアドバイスも紹介している。
 

1月13日、FDAとCDCは、ワクチン安全性監視システムの1つで、虚血性脳卒中の新たな「安全性シグナル」が検出されたとの共同声明を発表した。

「CDCのワクチン安全性データリンク(VSD)──ほぼリアルタイムの監視システム──は、ファイザー・ビオンテック製の新型コロナウイルスの2価ワクチンを接種した65歳以上の人々における虚血性脳卒中の安全性に関して、懸念の有無に関する追加調査を促すための統計基準を満たした」と声明は述べている。

VSDシステムは、9つの病院群が提供する1250万人分の米国民の電子カルテを監視している。

CDCは、他の安全性データベースではこのシグナルは検出されなかったと発表した(高齢者向け医療保険制度「メディケア」および退役軍人省のデータセットを含む)。ファイザー社も、自社のデータベースではこのシグナルは検出されておらず、他国のモニタリングシステムでも同様のシグナルは検出されていないとの声明を発表している。

また、ブースター接種後11〜21日目には、血栓リスクも高くなるようだ。特に、インフルエンザの高用量ワクチンやアジュバント添加ワクチンを同日に接種した人に顕著だという。

1月26日には、フォローアップ会議が開催された。しかし、リスクが確認されたにもかかわらず、CDCは引き続き生後6カ月以上のすべての国民にブースター接種を推奨している。

脳卒中のリスク、ブースター接種後11~21日目に増加

1月26日に発表された研究結果によると、接種後22〜42日目よりも、接種後1〜21日目に脳卒中の発症が多かったという。

ファイザー社の2価ワクチンをブースター接種した65歳以上の人の間で、接種後1〜21日の「リスク区間」に130件、接種後22〜42日の「比較区間」に92件の症例があった。前者における虚血性脳卒中のリスクは、後者のそれと比較して47%増で、P値は0.005だった。研究において、P値が0.05未満であればその差は統計的に有意とされる。

脳卒中が、ブースター接種後42日間の追跡期間全体を通じて発生していたことは重要だ。なかでも、ブースター接種後11〜21日に多く発生していた。以下の図の通りだ。

ファイザー製2価ワクチンのブースター接種と脳卒中に関するデータ(FDA)

ブースター接種後11〜21日目の65歳以上の人々における、22の脳卒中症例のうち、事前審査において一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴がある者は1人もいなかった。ただ、上記のうち64%が、新型コロナワクチンのブースター接種と同日にインフルエンザワクチンの接種を受けていた。(高用量インフルエンザワクチン13本、アジュバント添加インフルエンザワクチン1本)

データによると、TIAを経験した人の59%が退院して帰宅し、18%が退院後に在宅医療を受け、9%が退院後に高度看護施設に入り、14%(22人のうち3人)が死亡した。CDCは、ある1人の死亡例に関して、脳卒中との関連性を指摘している。

VSDデータベースでは、モデルナの安全性シグナルは検出されなかったが、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)では、モデルナ製ワクチンのブースター接種に関連した脳卒中症例が報告されている。ファイザーとモデルナの間で見られるこの違いは、実施されたブースター接種回数による可能性がある。1月7日時点で、米国ではファイザーのブースター接種回数はモデルナの2倍近くになっている(549,943人対285,706人)。

1月8日時点で、新型コロナウイルスのmRNAワクチン(2価ワクチン)接種後の虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作の症例は、VAERSで40件検出された。年齢中央値は74歳。内訳は男性19人、女性21人。発症までの期間の中央値は4日だった。そのうち25例はファイザー・ビオンテック製ワクチン接種後に、15例はモデルナ製ワクチン後に発生した。

ブースター接種×インフル予防接種でリスク増

VSDのデータ解析が示したところによると、ファイザー製ワクチンのブースター接種と、標準的なインフルエンザワクチンの接種を同日に受けた3人が脳卒中を発症している。一方、ファイザー製ワクチンのブースター接種と、インフルエンザの高用量ワクチンやアジュバントワクチンを同日に接種した40人が脳卒中を発症した。また、新型コロナワクチンのブースター接種だけを受けた高齢者60名が脳卒中を発症した。

インフルエンザの高用量ワクチンやアジュバントワクチンを同日に接種することで、脳卒中のリスクが跳ね上がるようだ。

新型コロナウイルスに含まれるスパイクタンパク質は、動脈血栓や静脈血栓のリスクを著しく増加させる可能性がある。英国民4800万人を対象としたデータベース解析では、特に新型コロナ感染後の数週間で、虚血性脳卒中のリスクが増加することが分かっている。

mRNAワクチンは人体にスパイクタンパク質を作らせる。ブースター接種される2価ワクチンは、2つの変異株(オリジナルの武漢株とBA.4/BA.5)のスパイクタンパク質の遺伝子情報を含んでいる。

血液中の血小板には、ケガをしたときに血栓を形成して出血を止める働きがあるが、スパイクタンパク質のS1ユニットは、この血小板を過剰に活性化させる。そのため、ウイルス感染後やワクチン接種後に、血液が小さな血栓を形成することがある。このような血流の滞りは、体の組織や臓器全体に問題を引き起こす可能性がある。

インフルエンザの予防接種は脳卒中のリスクを高めるが、これはおそらくワクチンが炎症反応を引き起こすためである。特に血液凝固異常の既往がある人は、虚血性脳卒中のリスクが高まる。ある台湾の報告では、75歳の男性患者が新型インフルエンザA/H1N1ワクチン接種後に後方循環虚血を起こした事例が指摘されている。

「FASTルール」を覚えておこう

虚血性脳卒中は、脳につながる動脈や脳内の動脈が血栓によって狭められたり、塞がれた場合に起こる。血栓は、動脈硬化巣(プラーク)の蓄積によって損傷した動脈によく形成され、頸動脈やその他の動脈にできることがある。

ワクチン接種後、ごく稀に脳卒中の有害事象が現れるのであれば、どのような前触れに注意すれば良いのだろうか。

5つの「急変」が脳卒中の前兆となる。一つでも該当するものがあれば、お早めに医師に相談していただきたい。

・突然、顔や腕、脚、特に体の片側にしびれや脱力感、ヒリヒリ感が現れる

・突然、混乱したり、眠気に襲われたり、会話が理解できなくなる

・突然、片目または両目の視力が衰えたり、景色が二重に見える

・突然、歩行困難やめまいに襲われたり、平衡感覚を失うことがある

・突然、激しい頭痛や吐き気に襲われたり、原因不明の嘔吐がある

症状は数分だけ続いた後、消えることもある。これは一過性脳虚血発作(TIA)として知られており、「ミニ脳卒中」とも呼ばれている。これらに注意を払うことが、あなたの命を救う。

以下の「FAST(顔・腕・言葉・時間)ルール」を覚えておくことが肝要だ。
F (face):顔が垂れ下がり、ちゃんと笑えない
A (arm):腕が脱力して、持ち上げられない
S (speech):発話困難に陥り、簡単な童謡も歌えない
T (time):以上のような「時」は、助けを呼ぼう

脳卒中やTIAの88%は、顔面脱力や腕の脱力、発話困難のうちの1つ以上の徴候がみられる。

一部の虚血性脳卒中患者に対する標準治療法として知られているのが、遺伝子組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)の静脈注射だ。注射は通常、脳卒中発症後3時間以内に腕の静脈で行われる。

障害を負う確率を下げるには、症状に気づいてからできるだけ早く救急病院に行くことが重要だ。脳卒中患者を救出するには、兆候の早期発見と、急性期にある患者に対する1時間以内の医療処置が必要だ。

予防接種に関する推奨事項

新型コロナワクチンを接種し脳卒中を経験した人が、ブースター接種を受けることは望ましくないといえる。

今のところ、この安全性シグナルはワクチン接種との関連が懸念されるように見える。新型コロナの重症化リスクが高い高齢者は、感染後数カ月間に脳卒中や心血管疾患のリスクが高まることを考慮し、それぞれのリスクに合わせた最適な助言を医師に確認する必要がある。

新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンを接種した人で、特に虚血性脳卒中リスクの高い人は注意深い観察が必要だ。

以下、医師と相談する価値のある賢明な推奨事項を挙げておく。

・より多くのデータが集まるまで、2価ワクチンのブースター接種を他の定期的な予防接種から切り離すことを検討しよう。

・新型コロナ感染後、数ヶ月待ってからブースター接種を受けよう。というのも、感染後は心血管疾患のリスクが増加するので、新たなリスクを導入する前に既存のリスクが低減するのを待った方が良いからだ。

脳卒中予防は、生活習慣から!

ウイルス感染後や予防接種後に、体がスパイクタンパク質を分解するのを助ける自然な方法が多く存在する。体を動かし、水分をたくさん摂り、抗酸化物質や抗血小板物質といった栄養素を増やすための食事選びが肝要だ。

予防接種の副作用としての脳卒中は、すべての人に起こるわけではない。それはつまり、リスクを減らすためにできることがあるということだ。

脳卒中の危険因子の多くは、循環器疾患や心筋梗塞と共通している。脳卒中と心筋梗塞はどちらも血管の障害と関連しているからだ。脳卒中のリスクは加齢とともに増加する。また、喫煙、高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病も脳卒中のリスクを高めると言われている。

生活習慣の改善は、脳卒中のリスクが高い人だけでなく、すべての人に推奨されている。したがって、健康維持に役立つことが証明されている、お馴染みの推奨事項がここでも重要になってくる。まず、定期的な運動が不可欠だ。健康的な食事と質の良い睡眠を心がけることは、体調を整えるための基礎となる。ニコチン(喫煙やベイプ)を避け、アルコールの摂取を制限する。これらの措置は血圧、グルコース、脂質のレベルをコントロールするのに役に立つ。

脳卒中のリスクを軽減するために、いくつかの心得がある。今すぐ始めて、生活の改善につなげよう。

1. 朝、ベッドから出る前に、布団の中でしばらく過ごす。睡眠中は血行が悪くなっているので、20分程度のウォーミングアップの時間をとって全身の血液を活性化させれば、血行が促進され、脳卒中のリスクを減らすことができる。

2. 起床後、コップ1杯のぬるま湯を飲む。コップ八分目のぬるま湯は水分補給になると同時に、血液を薄めて血行を促進させることができ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを低減する。冷たい水は血管を拡張せず、収縮させてしまうので避けよう。

3. 朝食にバナナを食べると、朝の排便がスムーズになる。押し出すと血圧が上がるので、排泄のために強く押し出すのはやめよう。健康的な排便は、毒素や老廃物を排出するのに役立つ。もちろん、毎日これができれば体も喜ぶはずだ。

4.  深煎りしたコーヒー、アルコール、唐辛子、胡椒など、刺激の強いものを口にしないようにする。これらは血管の収縮を誘発し、血圧を上昇させる可能性がある。

5. 塩分の多い揚げ物は避け、なるべく健康的な有機食品、ホールフードを選ぶ。後者タイプの食品は、一般的に抗酸化物質を大量に含み、血管や代謝に有益だ。

6. ゆっくりしたウォーキング、気功、太極拳、足を組めるなら座禅など、穏やかな運動を毎日定期的に行おう。このような長期的な健康習慣を身につけることで、健康レベルを総合的に高めることができる。多くの研究がそれを証明している。

心と体、両面からのアプローチ

人間は肉体だけの生き物ではない。人間の生命はホリスティック(全的)であり、身体的・感情的・精神的側面から構成されている。したがって、心理社会的ストレス、あるいは感情的なストレス要因を特定し、修正するよう心がける事が大切だ。

多くの研究によって、「Type A行動パターン」、すなわち怒りっぽくてせっかちな振る舞いが、脳卒中のリスク上昇と関連していることが分かっている。一方で、良心的な態度が脳卒中関連の死亡率に対して保護的であることを示す研究もある。

ある横断研究は、脳卒中の重大な危険因子である高血圧、糖尿病、肥満のほか、性格や感情についても試験した。性格特性のうち、高い協調性や「感じの良さ」が収縮期高血圧(p値=0.039)および糖尿病(p値=0.010)の減少と関連していた一方で、怒りは糖尿病の増加(p値=0.009)と関連し、恐怖は肥満の増加(p値=0.024)と関連していた。

高いレベルの協調性や「感じの良さ」が高血圧と糖尿病に対して保護的である一方で、怒りと恐れは糖尿病や肥満の素因となる可能性があるようだ。脳卒中との関連についても、同じ傾向があるはずだ。

私たちは、自分の健康に大きな影響を与えることができる。今日から、ポジティブな変化を起こしていこう。

疫学者。公衆衛生プログラムのマネージャーを務めた経歴を持つ。青少年のmRNAワクチン接種に関して、初めてリスク・ベネフィットの層別解析を行なった研究の筆頭著者。これまで編集に携わった400以上の研究論文が、インパクトファクターの高い査読付きジャーナルに掲載されている。Artemis Biomedical Communications, LLCの創設者兼CEOを務める。
エポックタイムズのシニアメディカルコラムニスト。中国の北京大学で感染症を専攻し、医学博士と感染症学の博士号を取得。2010年から2017年まで、スイスの製薬大手ノバルティスファーマで上級医科学専門家および医薬品安全性監視のトップを務めた。その間4度の企業賞を受賞している。ウイルス学、免疫学、腫瘍学、神経学、眼科学での前臨床研究の経験を持ち、感染症や内科での臨床経験を持つ。