オランダの投資グループは、保有するIT大手テンセント(騰訊)株を香港のシステムに移管することを発表した。またソフトバンクは今年、電子商取引大手アリババの株約72億ドル相当を売却する見通しだ。相次ぐ外国資本離れで、中国共産党政権の外資食い止めは成功していない模様だ。
テンセントの大株主であるオランダの投資集団プロサスは12日、テンセント株9600万株(40億ドル以上)を香港の中央清算決済システムに移管すると発表した。売りが加速するとの見方から、テンセント株は1月後半以来の大幅安となった。
また、アリババの大株主である日本のソフトバンクグループが約72億ドル相当の同社株式を売却する見通しであることが明らかになった。米国証券取引委員会(SEC)に提出した規制文書でわかった。
ソフトバンクは売却に関して直接的な回答は避けつつ、市場変化の対応として「防御モード」へのシフトを図っていると英フィナンシャルタイムズに語った。「現金を調達して手元の流動性を高めることで安定性を強化している」という。
アリババは約20年前にソフトバンクから2000万ドルの投資を受けた。現在は6つの独立した事業部門に分割することで運営改革を検討しているとされる。アナリストは、独占的なビジネス慣行にあった同社に対する中国共産党の圧力を解消する狙いがあると分析する。
創設者の馬雲(ジャック・マー)氏は1年以上、日本を含む海外暮らしを続けたが、3月に中国に帰国したと報じられている。
今春、習近平政権は中国経済の再建を誓い、長年のコロナ抑制策と規制強化による損失を修復すると公表した。習近平主席は4月はじめ、ハイテク企業の集まる広東省を視察し、外国投資家に「チャンスをつかむ」よう呼びかけた。このほか、日本の地方都市へも中国地方政府高官らが「営業」に訪れていたことは記憶に新しい。
しかし、ソフトバンクとプロサスの動きにより、最も収益性の高いとみられていた中国テック企業は売りが加速する可能性がある。
中国政府が外国資本を歓迎し、規制緩和の姿勢を示しているにもかかわらず、外国投資家が中国企業から撤退するのは、信頼や楽観的な見方が後退していることが原因との指摘もある。
金融分析大手IGアジアのアナリスト、ジュン・ロン・ヤップ氏はブルームバーグに対して、ソフトバンクのアリババ株売却は「外国投資家が中国のテクノロジー企業に対して一般的に信頼を失っている」ことを示しており、さらに他の外国投資家が追随する可能性があると述べた。
中国経済は外国投資がなければ回らない。中国問題評論家の王赫氏は大紀元の取材に対して、中国経済は外資に依存しており、輸出は主に民間企業や外資系企業に依存していると指摘した。
さらに外国企業にとって、中国は共産党当局の恣意的な逮捕や拘束が起こるカントリーリスクの極めて高い国だ。3月、北京でアステラス製薬の社員が当局に拘束された。4月初旬には林芳正外相が訪中し、秦剛外相との会談で早期解放を要求したものの「法に基づいて対処する」との回答にとどまり、現在も解放されていない。具体的な容疑や拘束の経緯も明かされていない。
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