「偉大なアメリカを取り戻すために立候補する」。フロリダ州の保守派知事ロン・デサンティス氏は24日、ツイッター投稿で2024年大統領選への参戦を表明した。不法移民問題や犯罪の蔓延、現職大統領の失策を列挙し、「繁栄と自由のために奮闘しよう」と強調した。
米国内で左派イデオロギの旋風が巻き起こるなか、デサンティス氏は穏健な保守派として伝統的価値観を重んじる政策を打ち出している。新型コロナのロックダウン政策に反対し、LGBT問題については女性と子供の権利を擁護している。SDGsの推進には厳しい姿勢で臨み、中国共産党の浸透工作には効果的に反撃した。
生い立ちと家族構成
デサンティス氏は1978年、フロリダ州ジャクソンビルで生まれた。父親はニールセン社の視聴率を計算する機器を設置する仕事に就いており、母親は看護師だった。
野球に打ち込み、1991年のリトル・リーグワールドシリーズに出場した。名門イェール大学では野球チームのキャプテンを務め、ハーバード大学ロースクールを2005年に卒業するのと同時に弁護士登録した。
ロースクール在学中に海軍に入隊し、海軍特殊部隊「SEALs」の法律顧問としてイラク駐在を経験する。
2012年に下院議員に初当選、以降2018年の州知事選まで3期務めた。
2009年にはニュースキャスターのケイシー・ブラックさんと結婚、3人の子供を儲けた。コミュニケーションスキルと健康・育児面での専門知識を持ち合わせるケイシー夫人は、デサンティス氏の最も近しいアドバイザーであると言われている。
コロナロックダウンに反対
デサンティス氏は、新型コロナへの賢明な対応で知名度を高めた。厳格なロックダウン政策に反対し、マスク着用の義務化にも抵抗、いち早く学校の対面式授業を再開した。
フロリダ州では感染症例が急増したが、2021年当時の死亡率は24位と平均的な数字となった。米CDCが2020年にまとめた平均寿命のデータは1.5歳の低下となり、全米平均の1.8歳を下回っていた。
中国土地買収の阻止
デサンティス氏は8日、中国企業による土地購入を阻止する法案に署名した。対中政策を強化する2法案も成立させるなど、中国共産党による手広い浸透工作への対抗姿勢を鮮明にした。
デサンティス氏は記者会見で「サンシャイン・ステートに(中国共産党は)いらない」「食糧供給を守ることは、安全保障の問題だ」と強調した。中国企業による対米投資の規制強化を図る狙いがある。
SDGs、ESGへの反骨
デサンティス氏は左派エリートが主導するSDGsやESGにも明確な反対姿勢を示している。5月2日にはESG関連の投資活動を制限する「反ESG法」に署名し、地方債を発行する際にESGの要素を考慮することを禁じた。
デサンティス氏は5月2日にジャクソンビルで講演した際、ESGは「エリートがビジネス機関や金融機関を通じて、我々の経済に広くイデオロギーを押し付けようとする試みだ」と述べた。
今年2月に法案を提出する際、デサンティス氏は「ESGを重視した投資は受益者の経済的利益にならない可能性がある」と指摘した。
イーロン・マスク氏との関係
ツイッターCEOで億万長者のイーロン・マスク氏は2022年6月、2024米大統領選でデサンティス氏を支持する考えを示した。デサンティス氏は出馬表明をツイッターで行っており、オールドメディアを嫌う姿勢が顕著に現れている。
イーロン・マスク氏はツイッターを既成の報道機関に代わるものとして位置付けており、24日の出馬表明の際には音声機能「スペース」でデサンティス氏と共演した。
LGBT問題への取り組み
デサンティス氏は17日、未成年者に対するホルモン剤投与といった医療行為を禁止する法案に署名、「未成年者の身体切除を永久に非合法化するものだ」と強調した。
共産主義の脅威を伝える
共産主義の恐ろしさを次の世帯に伝えるため、デサンティス氏は2022年5月、「共産主義犠牲者の記念日(11月7日)」に中国共産党や旧ソ連などで起きた大量虐殺や飢饉、迫害について生徒に伝えるよう公立学校に義務付けた。
デサンティス氏は「州民、特に学生たちに共産主義の罪悪やその独裁者、そして共産主義に苦しむ何億もの人々について理解を深めてほしい」とその狙いを話した。
「共産主義の暴政史」に関する授業は2023~24年度の学年から始まる予定。
ディズニーとの「文化戦争」
左派の「Woke(覚醒した、社会的正義に対して敏感な)」イデオロギーを標榜するディズニーに対し、デサンティス氏は攻勢を強めている。州上院では4日、知事が任命する監督機関がディズニーとの契約取消を可能にする法案が可決した。
ディズニーは、幼稚園児や小学校低学年の児童に性的指向や性自認を教えることを禁じる法案に対し反対の立場を示してきた。「LGBTQ+コミュニティの権利と安全のために立ち上がることに専念する」とし、州への献金を全て停止すると発表した。
デサンティス氏は「『Woke』イデオロギーを私たちの州に押し付けるのであれば重大な脅威と見なす」と述べ、左派のイデオロギーはアメリカを崩壊に導くだろうと警告した。
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