トヨタ経営陣は、「EVのみの議題」では消費者の利益にならないというスタンスを堅持
トヨタに気候変動開示を要求しようという、欧州の3ファンドが画策した提案は、株主によって否決された。
去る5月、デンマークの年金基金であるアカデミカペンションとノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、そしてオランダの年金投資会社APGアセット・マネジメントが、気候に係る決議を提出した。その決議は、トヨタに対して、気候変動ロビー活動の開示を改善させることを目的としていた。
当時、トヨタの取締役会は、「株主が気候変動決議に反対票を投じるよう」、勧めていた。会社の年次総会当日、株主はまさにそれを行い、約20年ぶりに提出された投資家提案である決議を拒否したのだ。
愛知県豊田市で開催された総会には、約3800名の株主が参加した。株主は、提案が拒否されたことに対して拍手を送った。トヨタの株式の大半は、同社、グループ会社、定年退職者など、トヨタのビジネスの視点に共感する人々が保有している。
5月、欧州の3ファンドは合計で約4億ドル相当のトヨタ株式を保有していた。 ロイター通信によると、アカデミカペンションの最高投資責任者であるアンダーズ・シェルデ氏は5月にこう述べていた。
「トヨタは、世界的なEV販売の急増というトレンドに乗り遅れ、得られるべき利益を逃し、さらに、貴重なブランドを危険に晒している。世界中の投資家を落ち着かせるためには、具体的な政策の変更と独立したデータに基づく年次レビューの改善が必要だ」
カリフォルニア州公務員退職制度やニューヨーク市会計監査官事務所など、主要な米国の年金投資は、気候変動提案を支持していた。
ところが、市場は、株主が気候変動提案を拒否した事実を肯定的に受け止めた。木曜日、トヨタの株価は景気良く始まり、東部標準時3時50分現在、0.45%上昇した。今月は20.64%上昇し、年初来では29%近く上昇した。
トヨタと同じく、多くのアメリカ企業の株主は、環境、社会、コーポレートガバナンス(ESG)提案をますます拒否している。
最近、フィナンシャル・タイムズは、サステナブル・インベストメンツ・インスティテュートのデータを引用してレポートを公開した。
それによると、「企業に対して気候変動を強制的に要求する」提案が出されてきたが、今年5月末までに平均23%の株主承認しか得られておらず、2022年の36.6%、2021年の50%から著しく減少している。また、社会正義への支持は、昨年から10パーセントポイント減少した。
トヨタのカーボンニュートラル方針
トヨタの関係者は、「同社が2050年までにカーボンニュートラルを目指している」ことを強調している。しかし、同社はバッテリーEV(BEV)だけに焦点を当てるのではなく、水素車両、ハイブリッド車、プラグインなど、複数のエネルギーオプション車も模索している。
同社の幹部の1人である山本正裕氏は、AP通信に対して、「さまざまなオプションを準備する必要がある。大事なのは、トヨタの取り組みを株主の皆様にもっと伝えていくことだ」と語った。
12月、「技術とインフラが未成熟であるため、EVのみ追求する自動車メーカーは、市場の現実を反映していない」のだと、トヨタ自動車の豊田章男社長(当時)は語っていた。
ウォールストリートジャーナルは、タイ訪問中の豊田氏の発言を取り上げた。
それによれば、「自動車産業に携わる人々は大部分がサイレントマジョリティだ。その彼らが、EVを唯一のオプションとして取り組んでいいものか、大変疑問思っている。彼らは、それが世の中のトレンドだと思っているので、大声で話さないが…つまり、正解は明瞭ではないので、選択肢を1つに限定すべきではない」と語った。
年次総会では豊田会長の再任を問う株主提案もあったが、投資家は豊田を会長の続投に投票した。
5月18日、トヨタのチーフ・サイエンティスト兼トヨタ研究所のCEOであるギル・プラットは、広島で記者団を前にして、「大規模なEVへの移行となれば、十分な数の充電ステーションのインフラ開発だけでなく、大量のバッテリーを製造するための原材料が必要になる」と述べた。
「そのためには、原材料採掘、再エネ由来発電施設、送電線、季節調整型のエネルギー貯蔵施設などの拡大が必要だが、その確立には数十年かかるだろう。いずれは資源の制約もなくなるだろうが、BEVのみが解決策では、長期に亘って、バッテリー材料や再生可能な充電資源を確保することはできないだろう」と語った。
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