9月1日、中国人民代表大会常務委員会は「外国国家免除法」を成立させた。この法律は、外国資産の凍結や押収を可能とするもので、多くの専門家はこれを中国当局の新たな「嫌がらせ」と位置づけている。特に、反スパイ法に続く動きとして、外国企業や邦人の安全上のリスクが増大するとの声が上がっている。
国営新華社通信5日付によると、中国当局は「相互主義のもと、外国が中国の持つ免除を廃止、制限すれば対抗措置を取る」との立場を明確にした。この法律は2024年1月1日から施行される。
主権免除は国際法の原則で、ある国の裁判所が他国の主権行動に対して裁判権を行使しないことを意味する。しかし、新たに導入された「外国国家免除法」は、この原則を変更。外交活動さえも中国の裁判所の対象とする内容となっている。
中国外交部報道官は5日、この法律により、外国の非主権的行動に関連する訴訟、例えば商業活動や人身傷害、財産損害などの紛争に対して、中国の裁判所が管轄権を持つと明言。さらに、外国の商業活動に関連する資産に対しても強制的な措置が可能となると述べた。
中国の新法により日本企業や邦人のリスクは高まる一方だ。日本外務省および駐中国日本大使館は、7月1日に施行した改正反スパイ法について注意喚起を発出。「スパイ行為」の定義が不明瞭であり、当局が同法を「不透明かつ予見不可能な形で解釈する」恐れがあると指摘している。
外国国家免除法に対する国内外の反応は、中国の法執行の不透明感に焦点をあてている。
一部のネットユーザーは、外国投資の撤退がますます進むと懸念を示した。また他のユーザーは「合法的な略奪法」と批判した。「中国共産党が台湾を侵攻し、SWIFT決済システムから追放された後、米国の中国資産を没収するための法的根拠として導入された」などの憶測も広がっている。
著名な中国政治運動家である陳忠和氏は、外国人や外国企業に対して早く中国を離れるよう警告を発する。特に「反スパイ法」を理由に、逮捕や資産凍結が行われる可能性があると指摘している。
北京の元弁護士で国際法の専門家、頼建平氏は、新法の背景には、巨額の賠償訴訟を回避する意図があるのではないかとの見解を示している。
「新型コロナウイルスの発生後、多くの米国の機関や個人が中国に対して訴訟を起こしている。これにより巨額の賠償が発生する可能性がある。中国共産党はこのような法律を導入することで、西側との法的な衝突を避ける狙いがある」
香港の弁護士で時事評論家の桑普氏は、これらの法律は「外交圧力をかけるためのツール」としての側面があると指摘する。
中国の法律の不透明感について、EUデジタル担当大臣ベラ・ジュローバ氏は18日、張国清副首相氏とのデジタル分野協議の中で苦言を呈している。「中国の不透明で予測不可能な法律は、外国企業に懸念を抱かせている」と述べた。
ジュローバ氏は記者会見で、中国の法律にある用語の定義がはっきりしていないこと、特に「重要なデータ」とは何かの定義が欠けているとの見解を明らかにした。
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