今月2日夜、江西省南昌市進賢県の小学校と中学校の教師、数百人が県政府庁舎前に集まり、長期にわたる給与未払いの件をめぐって県政府に抗議し、未支給になっている給与の早急な支払いを求めた。
教師たちが「血と汗の給料を払ってほしい(還我汗血銭)」「私たちは生きたい(我們要活命)」「ストライキするぞ(罷課)」などのスローガンを叫びながら、県政府に抗議をする動画がSNSに拡散されている。
ついに「教師の限界が来た」
別の動画のなかには、拡声器を手にした現地政府の教育担当者が、抗議する教師たちに向かって話しかけるシーンも収められている。しかし、政府側の説明に対し、抗議する教師たちは全く納得できない様子だ。
現在、このような教師による抗議に関連する動画は、中国のネット上から全て削除されている。
関係者によると、これらの教師は数カ月、なかには1年以上も給料の支給が遅れている、つまり無給状態だという。
無給でありながら、これまで生徒に対する授業をおこなってきたのは、個々の教師がもつ教育への使命感に他ならない。
しかし、いかに使命感があっても、生活が成り立たないのでは教師も生きられない。今回の大規模な抗議は、その限界が来たことを意味している。
「預かり証文」を取ろうとする政府
教師側からは「芸術節(日本でいう文化祭)のために数十万元(約数百万円)を費やして芸能人を呼び寄せている。そんなお金があるのなら、なぜ教師に給与を支給しないのか。全く不可解だ」という声も上がった。
多くの教師による抗議をうけ、県政府は各教師に対して「3カ月間で3.3万元(約68万円)の給与を支給する」ことを承諾した。しかし、それと引き換えに、教師らは「誓約書(承諾書)」への署名を求められている。
その書面は「今回の業績給支払い政策を認める。今後は集会などに参加しない。不適切な言論を発表しない」という内容のものだ。
つまり政府側は教師から、二度と政府に文句を言わない、という「預かり証文」を取ろうというのだ。しかし、その政府が正常に機能していない状態である以上、どうして政府の言うことを信用できるというのか。この提案で、教師側の納得が得られたわけではない。
地元(進賢県)政府の教育部門の職員は「いま政府は財政的にとても困難だ。しかし、教師たちのボーナスは、時間はかかるが支払われる予定だ」と話している。本当にそうであるかは、もちろん定かではない。
常態化した「教師の給与未払い」
また、同じく地元政府の職員によると「現在、県内の公務員の給料は減額され、各種手当もカットされている。(教師のような)給料の未支給はないが、その分、私たち職員には業績給やボーナスはない」という。つまり、政府職員は「(教師だけでなく)こっちだって苦しいのだ」ということを言いたいらしい。
中国メディアの報道によると、進賢県政府は「教師たちの業績給20年分が未支給」になっているばかりか、本来あるはずのボーナスの支給にも「重大な帳簿書類の改ざん行為」が存在しているうえ、昨年の給料(1年分)も未払いになっているという。
近年、中国の各地方の財政状況は悪化の一途をたどっている。その影響で、教師の給与未払いは、完全に「常態化」しているといってよい。このため、給与の支払いを求めて、ストライキ(授業をしない)したり、地方政府へ抗議活動を起こす教師が後を絶たない。
中国メディア「澎湃新聞」によると、教師の給与未払いについては、地方政府の「財政難」が一般的な原因とされている。しかし一部の地方では、教育資金の使い込みなど「不正支出の問題」が、以前から存在しているという。
(11月2日夜、江西省南昌市進賢県の政府庁舎前に集まって抗議をする教師たち。NTD新唐人テレビの報道番組より)
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