アングル:中国の外国系私立学校に逆風、政府の公立重視政策と内向き志向で

2023/11/11 更新: 2023/11/11

[香港 8日 ロイター] – 中国では今後、数十校に上るインターナショナルスクールと外国系私立学校が閉鎖や合併に向かうと見られている。規制の強化、景気の減速、外国人生徒の減少といった逆風下に置かれているためだ。

最近では英パブリックスクール(名門私立校)であるダリッジ・カレッジの一部株主が、中国を中心とするアジア事業の売却に向けて協議を進めていることが、関係者2人の話で明らかになった。5700億ドル(約85兆7800億円)の市場規模を持つ中国民間教育業界で混乱が広がり、教育機関が経営の見直しを迫られている様子が改めて浮き彫りになった。

中国では新型コロナウイルスのパンデミック前に欧米式の試験カリキュラムを提供する民間経営のバイリンガルスクールが急拡大。しかし政府が2021年に新たなルールを導入し、子どもへのプレッシャーを和らげ、家計負担を減らすことを狙って個別指導ビジネスに対する規制を強化すると、民間教育業界に動揺が走った。

教育専門コンサルタント会社、ベンチャー・エデュケーションのマネジングディレクター、ジュリアン・フィッシャー氏は、3年間におよぶパンデミックと経済成長の鈍化が事態をさらに悪化させたと指摘する。

ダリッジ・カレッジは中国で9校を運営し、この中には規制変更による打撃が最も大きい中国人向けバイリンガル学校も含まれる。中国以外ではシンガポールと韓国に学校がある。

ダリッジは2022年の年次報告書で、中国における高校事業拡大に関する計画を「政府の規制見直しを考慮して縮小した」と説明。中国、韓国、シンガポールで「ダリッジ・カレッジ・インターナショナル」スクールとハイスクールを所有・運営するエデュケーション・イン・モーション(EiM)は、アジア事業売却の可能性に関するロイターの問い合わせに対し、「新たな戦略的財務パートナーを迎える手続きを進めている」ところであり、その過程でパートナーが投資を引き揚げることも可能だと説明した。

<自前主義>

中国の学校は公立、私立、外国人パスポート保持者向けに分類される。教育をてこに科学技術の「自給率」を高め、あらゆる面で大幅な若返りを図るという習近平指導者の国家戦略にとって学校は極めて重要な位置を占めている。

英国際交流機関ブリティッシュ・カウンシルによると、中国には2020年に全国で約18万校の私立教育機関があった。全教育機関に占める比率は3分の1を超え、在籍生徒数は計5560万人に上っていた。

しかし外国人パスポートを持つ学生しか入学できないインターナショナルスクールは、パンデミックの発生や地政学的緊張の高まりで米英、カナダなどの国からの駐在員が帰国したことで、生徒数が減少している。

一方、中国政府は締め付けを強化。私立学校は義務教育の内容を教えることが義務付けられ、カリキュラムで公立学校との差が小さくなった。そのため保護者は私立学校の高額な学費を払う必要があるのか疑問を抱くようになった。上海のインターナショナルスクールの年間授業料は30万元(約620万円)を超える場合もある。

当局は私立学校の数を規制する動きも見せている。

そして先月、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が、全国民を対象とした愛国教育を制度化する法案を可決し、24年1月1日から施行されることになった。

「私立の小学校や高校は規制が厳しくなっている」と、上海のインターナショナル・ハイスクール、ラクトンのフランク・フェン副校長は話す。

過去2年間に幼稚園から高校まで、数十校が閉鎖されたり、経営が行き詰まったりしている。中国南部の粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)では、深センのダリッジ・アーリー・イヤーズ・センター、広州のイートン・ハウス・インターナショナル・キンダーガルテン、ビクトリア・キッド・ハウスなどが閉鎖された。ウエスタン・インターナショナル・スクール・オブ・上海は、新学期になっても戻ってこない生徒が予想以上に多かったため、8月に20人のスタッフが解雇されたという。

バイリンガルスクールやインターナショナルスクールの運営会社など民間教育企業の多くが、中国の資産の売却を検討していると、エバーパイン・キャピタルのディレクター、ジミー・チン氏は明かした。「今の中国では教育資産は買い手よりも売り手の方が多い」という。

<脱英語化>

大学でも英語に関する要件を緩和する傾向が強まっている。外国人人材への依存を減らし、中国を自前で科学技術大国に発展させるという習近平国家主席の方針を推進するためだ。

西安交通大学は9月から卒業要件に英語能力テストの結果を使用しないと通達。安徽省の中国科学技術大学は10月から英語を含む6つの学部専攻を中止する。

地政学的な緊張も中国の脱英語化に対する懸念に拍車をかけている。中国は内向き志向を強めているのだ。

インターナショナル・スクール・オブ・北京の最高財務責任者(CFO)、マティアス・ボワイエ氏は、一帯一路諸国からの留学生が増加している現状を紹介した上で、「今後5年ないし10年の間にどのようなタイプの生徒を海外から受け入れるのか、徹底的に見直す必要がある。そして、それはこれまでのように欧米的なものではなくなっていくだろう」と語った。

Reuters
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