中国共産党は最近、アジアや欧州の6カ国からの入国者を対象に、ビザを一方的に免除すると発表した。中国国内では子どもを中心に感染症が流行しており、医療の逼迫が見られる。この状況下で人の流動性を高めれば、武漢肺炎初期のように、国外への感染拡大を引き起こすのではないかとの懸念があり、厚生労働省も注視している。
一方的にビザ免除
中共外交部の毛寧報道官は24日、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国のビザ保有者を対象に、入国ビザを免除すると発表した。期間は12月1日から2024年11月末までの1年間で、「試験的な取り組み」だとしている。
ビザ免除期間中、6カ国のビザ所有者はビジネス、旅行、観光などの目的で、15日以内の滞在であればビザなしで入国することができる。
ビザ免除の理由については、外国人の往来の利便を図るためだと説明した。
感染拡大の波
外国人への開放的な政策とは裏腹に、中国国内では子どもを中心に感染症が蔓延、医療現場が逼迫している。北京市や天津市の児童病院(小児科)では昼夜を問わず、発熱した児童が次々と来院。発熱外来に受診しようにも、24時間待ちだと言われた親もいるという。
こうした中、世界保健機関(WHO)は22日、中国北部で子供の「肺炎」のクラスターが発生していると発表。国際保健規則(IHR)に基づき、子供の肺炎の感染拡大について疫学的、臨床的な検査結果を提出するよう要請した。
中国の国家衛生健康委員会は今月13日の記者会見で、季節性インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、呼吸器合胞体(RS)ウイルスによる感染症などが蔓延していると説明した。
中国の都市部では小中学校の休校も相次いでいる。大連市では、多くの小中学校でクラスの生徒の3分の1以上が感染しているとの情報もネット上で確認されている。
武見敬三厚生労働相は24日の閣議後記者会見で、中国で子供の肺炎が急増していることについて、WHOが中国に問い合わせをする前に国立感染症研究所から情報を把握していたと述べた。
今後は外交ルートを通じて情報収集を行うとともに、内閣感染症危機管理統括庁と連携して対応していくと語った。
厚生労働省も状況を注視している。24日、中国に渡航した人に対し、発熱や呼吸器症状等で受診する際には渡航歴を医療従事者に伝えるようSNSを通じて呼びかけた。医療関係者に対しては、中国渡航歴のある患者を診察する際には、マイコプラズマ肺炎やRSウイルス感染症等も念頭に入れるよう求めた。
募る中共当局への不信感
猛威を振るう感染症の主な症状は咳、発熱、喉の痛み、嘔吐など。時にはレントゲンで肺全体の炎症により白く映る「白肺(バイフェイ)」のような重症化するケースも見られる。
当局の説明に対し、民衆の間では「中共ウイルス(新型コロナ)」の再来ではないかと疑う声も上がっている。
「政府が再び隠蔽している」「本当は新型コロナだろう。また呼び名を変えただけだ」との意見や、「新型コロナの時と同じ。中共は外国人を入れて、感染を国外に広める気か」という声もあった。
その背景にあるのは、感染症の実態に対する中共当局の情報封鎖と隠蔽だ。今年初め、中国の病院はコロナ感染と疑われる患者に対し、PCR検査をせずに一律「A型インフルエンザ(甲流)」と診断していたという。
匿名を条件に新唐人テレビの取材に応じた北京市在住の男性は「役所や企業、学校では感染者が急増している。しかし当局は人々がパニックに陥るのを恐れて、情報を公開していない」と語った。
米国のウイルス学の専門家で、米陸軍研究所のウイルス学科実験室主任も歴任した林暁旭博士は「これは、やはり新型コロナの変異株である可能性が高い」と分析している。
米国のラーム・エマニュエル駐日大使は24日、コロナパンデミック時の中共の欺瞞工作を念頭に「新型コロナで見られたような欺瞞や先延ばしは捨て去る時だ。オープンでタイムリーな情報開示が人命を救う」と指摘。「国際社会との全面的な協力は選択肢の一つではない。公衆衛生上の必須事項だ」と釘を刺した。
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