アラブ首長国連邦のドバイで開催されている気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、日本を含む先進国は、石炭火力発電の新規建設中止や廃止などが求められている。中国共産党は、環境課題は「先進国に責任がある」と矛先を向けるが、実際、世界最大の温室効果ガス排出国は中国であることが、最新の報告書で明らかになっている。
中国共産党機関誌の環球時報は11月30日、北京のシンクタンク、中国グローバル化センター副会長のビクター・ガオ(高志凱)氏の寄稿を通じて「途上国よりも大量の汚染を引き起こしてきた先進国こそ、気候変動の影響を緩らげる努力をすべきだ」と訴えた。党のプロパガンダとして、同誌は党の見解を代弁している。
先進国が環境問題への責任の大部分を担うべきだというのが中国共産党の主張だ。いっぽう、最近のデータでは、中国が世界の先進国全体を上回る温室効果ガスを排出し、地球上で最大の汚染国であることがわかっている。
中国が最大の排出国
独立調査機関である気候行動トラッカー(CAT)は、2022年の地球温暖化ガス排出量は世界全体で500億トン前後だが、最大排出国は中国で、全体の30%近くと圧倒的な割合を占めていると指摘した。
このほか、中共政権が「化石燃料の役割を引き続き重視し、エネルギー部門の移行において化石燃料の生産増加を安定と安全の鍵と見なしている」ことについて、気候変動への努力は「非常に不十分だ」と低評価を下した。
「最大の排出国」であることを裏付ける数値は、すでに数年前から出ている。
米ワシントン拠点の経済政策シンクタンク、ロジウム・グループによる2021年発表の報告書によると、2019年に中国の年間温室効果ガス排出量が初めて先進国全体の排出量を上回ったことがわかった。
1990年には先進国排出量の4分の1以下だった中国の排出量が過去30年間で3倍以上に増加。2019年には世界全体の二酸化炭素排出量のおよそ3割となる14ギガトンに達した。
ロジウムによると、2022年には7つの経済体が世界の排出量の約3分の2を占めており、中国が26%で首位、米国が12%、インドが7%、欧州連合が7%となっている。
汚染の指摘も…火力発電の維持
安価な火力発電は、途上国の経済発展を支えてきた。特に、世界貿易機関(WTO)加盟後の2000年以降、中国は石炭火力で経済を推してきた。
今日では、世界的に石炭火力発電の厳しい制御を求められているが、中国では現在も建設が続けられている。米国サンフランシスコに拠点を置く環境NGOグローバル・エネルギー・モニターによると、中国には現在306の石炭火力発電所がすでに建設中、または建設を許可されている状態だ。
米環境界の重鎮アル・ゴア氏が創設した環境NPOクライメート・トレース・プロジェクトによれば、二酸化炭素の80倍強力な温室効果ガスであるメタンの排出量が世界的に近年増加しており、これは中国の炭鉱が大部分を占めていると指摘した。
中国共産党はグリーンエネルギーに投資しており、習近平は「2060年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収の相殺)達成」を宣言した。いっぽう、過去数年間の極端な気温、最悪の干ばつ、記録的な洪水など、地球規模の気候変動は目標達成の難しさを示唆している。
2022年、北京は最も暑い日に安定した電力供給を維持できず、国のエネルギー安全を確保するために石炭の燃焼を再開した。グリーンピースによると、2023年上半期には河北省、江蘇省、山東省などで新しい石炭火力発電所が複数件承認されたという。
このほか、中国が「発展途上国」との立場から先進国を批判する視点も、現実とは一致しない。
「中国はなお発展途上国であり、現代化の道のりはかなり長い」と一昨年言明したのは亡き元首相李克強だが、実際、過去40年間で中国の経済力は急拡大し、経済大国となっている。国連の人間開発指数(HDI)では、中国は「高い」評価を受け、190カ国中79位にランクされている。
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