中学生の暴行死 真相を隠蔽し「自殺で幕引きはかる」地元政府=中国 河南

2024/01/04 更新: 2024/01/04

2023年12月28日、河南省商丘市寧陵県で起きた男子中学生、楊さん(14歳)の死亡事件をきっかけに、大勢の市民が学校や現地政府に押しかけて抗議する事件が起きた。

死亡した男子生徒は、全身に受けたひどい傷跡からして、学校内で暴行されて死亡した可能性が濃厚とみられている。

 

2023年12月28日、河南省商丘市で起きた男子中学生、楊さん(14歳)の死亡事件をきっかけに、大勢の地元市民が学校に押しかけて抗議する事件が起きた。 (SNSより)

 

胡鑫宇事件と同じく「自殺で幕引きをはかる」

今月2日、中国中央テレビ「央視網」は同事件に関する調査報告を報道。この悲劇について「官製の結論」を下し、強引に終止符を打とうとした。

報道によると、報告を行った現地当局は「遺体にドライバー(工具)による貫通傷はなかった。いじめもなかった。死者は23日未明に寮の窓から飛び降りた。遺書は学校に1通、自宅に1通あった」などと主張した。

この「事実と明らかに反することを、顔色一つ変えずに、ぬけぬけと話す」当局の発表をめぐって、ネット上では「今回も『鉄の鎖の女性』や『胡鑫宇事件』の時と全く同じだ」とするコメントや、当局に対する非難が殺到している。

昨年12月27日、学校側や寧陵県当局も同様に「(死因は)自殺だ」と決めつける報告を出していた。しかし、当局による全く不誠実な発表をきっかけとして、翌日(12月28日)から2日間にわたり、大勢の現地市民による抗議活動が行われた。

悲惨な死を遂げた生徒の真相究明を求めて、1万人ほどの地元の市民が学校前に集結。学校に抗議をする市民は、ついに学校のフェンスを押し倒した。

さらに怒った民衆は校内に突入して教師のオフィスを破壊するとともに、校長らしき男性を捕まえると罵倒し、殴り、ひざまずいて謝罪するよう要求した。

「撮影した映像を削除せよ」と迫る警察

また抗議の民衆の一部は、町の政府にも殺到して門を壊し、警察に連行された。

現地当局は28日夜から「濃霧」を口実にして、市内の高速道路を封鎖。また市内のあちこちに「検問所」を設けて、抗議に集結する市民を阻止し、少なくとも百人以上の抗議に向かう市民を逮捕している。

そのほか、当局は情報封鎖をするために、一部のネットを封鎖したり、現地でライブ配信を行う発信者を大量に逮捕していたという。

事件の後、事件の起きた学校では、学生たちに事件関連の動画を削除するよう通知した。警察も、抗議事件の様子を撮影した市民の家を個別に訪れて、撮影した動画の削除を要求している。

死亡した生徒・楊さんは、いわゆる「留守児童」であった。中国語の「留守児童」とは、両親が長年他省へ出稼ぎに出ており、祖父母や親族に育てられている子供を指す。

楊さんの兄は現役の軍人だといわれているが、事件のニュースを聞いて帰省したその兄も、飛行機から降りるやいなや、大勢の公安に囲まれて連れ去られたという。

「遺書」を見せたのは、ほんの一瞬だけ

ネットに流出し被害者遺族の音声付き投稿によると、学校側は遺族に「ほんの一瞬だけ」遺書の複写を見せたという。

本当に本人の筆跡であるかどうか調べるため、遺族が遺書のコピーや写真撮影を求めたが、学校側が拒否したという。また、遺族は学校側に対し、監視カメラ映像の提供を要請したが、これも拒否されている。

事件の後、学校内部からの情報が次々と出てきている。これらネット上に流れている複数の情報は、いずれも「死亡した生徒は2023年12月23日深夜に、寮のなかで虐殺された」と証言している。

そのなかで「被害生徒は亡くなるまで、9時間も悲鳴をあげ続けていた」というのが共通の証言である。そのため、同じ学生寮に住む生徒は、学校から「(今夜は)寮には戻れない」と理由もなく告げられ、教室で一夜を過ごすことを余儀なくされた。

最終的に学校側は「本来ならば封鎖されていた寮の(上層階の)扉を開け、被害生徒をそこから地上へ投げ落とし、飛び降り自殺したという嘘の現場を作り上げた」というのが、多くの情報から浮かび上がってくる「12月23日深夜の真相」である。

直接的な加害者について、ネット上では「学生に殺された」という説から、「複数の教師によって虐殺された」「教師が学生たちをそそのかして暴行させた」「学生をそそのかした女性教師は校長の愛人だった」など様々な説が流れている。そうしたネット情報の精査は、今後の課題でもある。

この間、学校側が意図的に流した可能性があるとみられる「280万元(約5600万円)を遺族に渡した後、遺族は何も言わなくなった」というSNS情報があった。

しかし、死亡した生徒の遺族は金銭を受け取っておらず、これがニセ情報であることが分かっている。 

生徒の遺族は現在、当局によってコントロールされ真実の声をあげられないでいる。しかし、280万元もらったから黙るようになった、という情報は全くのウソで「私たち(遺族)は1元も受け取っていない」と明かしているという。 

 

 

「官と商の癒着は確実だ」との噂も

事件が起きた「育華園高級中学」は、現地当局が重点的に推薦する私立学校である。

1年前にも、教師が学生たちをそそのかして特定の学生を殴打させる事件が明るみに出ていた。ところが、この事件は当局の庇護によって、うやむやのうち闇に葬られている。

現地では「事件の起きた学校には強力なバックがある。官と商の癒着は100%確実だ」という噂がある。

著名な調査ジャーナリストである趙蘭健氏は、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)とのインタビューのなかで「近年、中国の教育環境には、本質的な変化がある」と明かしている。

趙氏によると、「いまや民間資本や不動産開発業者、あるいはどこの誰かもわからない人物までが、学校の管理運営に介入している。そのため、学校の校長や教師は、昔のような単純な意味での校長や教師ではなくなった。彼らの背後にあるのは、商業利益集団だからだ」という。

いずれにせよ、なんとしても事件の真相を隠滅しようとする闇の勢力が「学校・地元政府・警察」の複合体からなっていることは、これまでの事象から明らかであると言ってよい。

なぜ教育の場で、中学生が犠牲となる凄惨な殺人事件が起きたのか。

犯行の全容解明はこれからであるが、本人の意思による「飛び降り自殺」と決めつける学校や当局の人間すべてが、主犯または共犯、犯行を教唆した者、あるいは犯罪を隠蔽した者として、それぞれが罪を問われることになるのは必至である。

 

(抗議する市民を弾圧するため、現地にやってきた武装警察)

 

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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