火鍋レストラン、大型免税店、麻雀ルーム…中国の中産階級をターゲットとする大型クルーズ船「愛達・魔都号(アドラ・マジックシティー)」は年始に就航し、7日間かけて日本と韓国を周遊した。中国共産党は「初の国産」と称して民族的野心を鼓舞するも、船体部品の3分の2以上は輸入で、重要技術や設計は欧州企業に大きく依存している。
3千人もの乗客を乗せて済州島や長崎、福岡をめぐった巨大クルーズ船は、上海外高橋造船有限公司および国有・中国船舶集団(CSSC)の子会社が建造した。長さ323メートル、高さ72メートル、24階建てで、2125室の客室を有し、最大5246人を収容できる。
2013年に中国共産党党首の習近平が海南省を視察した際に建造を指示したことをきっかけに、中国船舶集団と世界最大のクルーズ会社であるカーニバル・コーポレーションが合弁企業を設立し、竣工させた。造船大手の伊フィンカンティエリとの技術提供契約により、中国の造船所は中国顧客向けの設計に仕上げた。
しかし中国誌「財新週刊」などによれば、建造費が膨れあがり50億元(約1千億円)を超える損失を出し、当初計画にあった2隻建造の計画も頓挫しているとの情報もある。船の総設計者によれば、部品の3分の2以上は輸入品であり、制御システムや客室設備もフィンランドやスイスなど欧州企業の技術が取り入れられていることが明かされた。
クルーズ船は空母に次ぎ世界でも最も複雑なシステムを備えた巨大電子機器とも例えられる。この市場は欧州企業が占有しており、伊フィンカンティエリ、独マイヤー、仏アトランティックによる造船注文で全世界の約90%を受注している。
欧州には下請け企業に至るまで供給チェーンが確立しているが、中国には国内供給が設計の要求を満たすことができない。
日本の新幹線や欧州の電気自動車(EV)がそうであったように、高い技術を誇る先進国企業は中国で合弁会社を作らなければ、中国市場ではビジネスができない。中国共産党は戦略的に海外からの技術を国内で吸い上げている。
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