参院予算委員会では6日、日英伊で共同開発される次世代戦闘機と第三国移転をめぐり、熱心な議論が交わされた。有村治子参院議員(自民党)は、移転が防衛産業の基盤維持強化や先端技術の習得に大きくつながると指摘。輸出に難色を示す公明党と調整を進める岸田政権の姿勢を問うた。
日英伊は昨年12月、東京の調印式で次世代ステルス戦闘機「テンペスト」の共同開発に向けた国際条約に調印。中国やロシアなど専制体制の国の脅威が増す中、民主主義国による制空権の優位性を固める決定的な一歩を踏み出した。
次世代戦闘機はパートナーの3か国以外からの調達が予想されている。岸田文雄首相は「第三国移転によって、我が国の求める性能を実現し、共同開発の成功にもつながる。国民の命と暮らしを守る好ましい安全保障環境の実現につながり、国益となる」と強調。「政府与党で調整を進め、検討を前に進めていく」と手続きにも言及した。
次世代戦闘機は日本の防衛産業への活力につながるとの見方もある。防衛省の坂本大輔政策部長は「戦闘機開発では最先端技術が広範に投入され、そのスピルオーバー効果(公益への波及効果)であらゆる分野への技術波及が期待できる」と答弁した。
国会では輸出事例について、韓国の防衛装備輸出政策が取り上げられた。坂本部長は「韓国は長年にわたり装備品の国産化に尽力し、近年は輸出拡大を国策に掲げている。輸出額は2022年で約170億ドル(約2兆5146億円)に達し、ここ数年で5倍以上に拡大した」と説明した。防衛装備の国際移転による産業振興効果にも言及があったという。
日本による完成品の防衛装備品の移転は、これまでフィリピンへの防衛レーダー1件のみ。積極的な動きが期待されている。
米ハドソン研究所日本フェローの村野将氏はXで、「日本が『死の商人』になることを心配している人は、日本の防衛装備品の市場競争力を買い被りすぎで、むしろ実績と競争力がなくて買い手がつかないことの方が懸念される」と指摘、市場アプローチへの積極姿勢の必要性を説いた。
防衛装備品の第三国輸出解禁を巡り、自民、公明両党は月内の合意を目指すと、時事通信が8日報じている。公明党は態度を軟化させ、次期戦闘機に限定するなど調整を図っている。
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