日本の陳情とは、例えば国や地方自治体に対して、住民の「要望」を伝えることを指す。それとは全く異なり、中国における陳情とは、多くの場合、地方政府から受けた不当な扱いや地方官僚の不正などを、中央政府に直訴することをいう。
こうした「陳情」そのものは、中国公民の正当な権利であり、違法性は全くない。
ところが、中央へ陳情されることによって「隠蔽しておきたい地方の問題」が、中央政府へ知られてしまうことになる。また、陳情局に訴える民衆が多いほど、地方政府の「失点」となる。それらは、端的に言えば地方官僚の出世に響くのだ。
そこで地方政府は、陳情者を排除したり、陳情者の口を封じて黙らせるために、実にいろいろな手を尽くしている。
陳情民への卑劣な弾圧「治療への干渉」
山東省の陳情民、孫愛栄さんの場合。脳梗塞など多くの持病をかかえる孫さんは、地元政府によって地元の病院内に閉じ込められている。しかし、病院にいるからといって治療が受けられるわけではなく、ただ自由を奪われているのだ。
孫さんは2月28日、脳に深刻な病気を抱える息子に北京の病院で治療を受けさせるため、息子を連れて北京を目指した。ところが孫さん親子は、現地政府当局によって列車駅から拉致され、地元の病院へ入院させられ、そこへ閉じ込められた。病院で治療を受けているわけではない。
NTD新唐人テレビに対し、孫愛栄さんは「私は脳梗塞、動脈硬化、心臓病など多くの持病を抱えている。いずれも監獄のなかで迫害されたことによる後遺症だが、治療を受けられないため、体じゅう痛くて本当に辛い」と訴えている。
それでも「近いうちに息子を北京に連れて行って、医者に診てもらわなければならない」という。
「私の息子は昨年5月25日、体の精密検査を受けている最中、地元の公安によって病室から無理やり連れだされ、地元のホテルへ監禁された。そのせいで病気への治療が遅れ、容体が悪化した」と孫さんは明かしている。
「入院預け金」を巻き上げる地元政府
黒竜江省出身の陳情民、馬志文さんも同様、現地政府から「病気治療を受けられない」などの不当な迫害を受けている。
陳情民である馬さんは私用のため北京へ行くと、地元の黒竜江省政府から絶え間ない脅迫が届いた。そうしたストレスの末、脳幹梗塞を起こす。今月5日、馬志文さんは地元の病院に入院したが、15日には病院から強制退院させられている。
「地元政府と結託した病院職員の手によって、私が入院時に預け入れた金が引き出され、それを地元政府が取り上げた」という馬さん。
中国の医療には高額な実費がかかる。入院する場合にも、前金を用意して病院に預け入れなければならない。
馬志文さんは、入院していた病院を追い出されてしまう。預け金まで取り上げられた馬さんは無一文になった。体の状態も芳しくなく、自力で歩くことも難しい状況であるが、お金がないため、ほかの病院にかかることもできない。
「陳情の件は解決していない。そして今、私は治療費もなくなり、命が危険にさらされている。私が受けた迫害について、国際社会に知ってほしい」と馬さんは15日、NTD新唐人テレビの取材に応じ、現地政府から受けた迫害について暴露した。
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