【独占】『書いてはいけない』出版記念!森永卓郎・康平氏緊急取材(上)未来の日本はどうなる?究極のタブー乗り越えて見えた希望と可能性

2024/04/12 更新: 2024/04/12

「ふざけるんじゃないぞ。私でさえ知っていたのに」

経済評論家の森永卓郎氏は義憤に駆られた。民主主義の日本で、なぜこれまでタブーが多いのか。外国メディアが風穴を開けないと、日本メディアは何もできないのか。そのような現状に目覚めてもらうために書き上げたのが、『書いてはいけない――日本経済墜落の真相』だ。

日本経済はいかにして暗礁に乗り上げ、今後の見通しはどうなるのか。そして、文字通り『書いてはいけない』と言われた内容を著書にまとめ上げた信念とはどのようなものか。

大紀元記者は現在は闘病中の森永卓郎氏と、息子の康平氏に話を伺うことができた。

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森永卓郎氏:

直接のきっかけは去年6月、イギリスの放送局BBCがジャニー喜多川氏の性加害問題を初めて報じたことだ。それまで日本ではタブーとされてきた問題だったが、日本のテレビや新聞が一斉に報道し、テレビのバラエティ番組などでも取り上げるようになった。ただ、そのときに芸能レポーターの皆さんは口をそろえて「噂では聞いたことがあったが、まさかこんなことがあるなんて」というコメントをしたのだ。

私はそれを聞いて「ふざけるんじゃないぞ。私でさえ知っていたのに」と思った。たぶん、9割方は知っていただろう。芸能レポーターが知らないはずはないのだ。結局、ものすごいタブーがあり、口にした途端にメディアから干されるという構造がずっと続いてきた。それが直接の動機になった。

私が四半世紀以上メディアの世界で生きてきた中で、言ったら即刻干されるというタブーが3つあると知った。1つはジャニーズの性加害問題。2つ目は、財務省は行政機関ではなくてカルト教団であるということ。3つ目が日本航空123便の事件だった。一昨年に私も65歳になって、年金も出るようになったので、全部の仕事を失っても飢え死にすることはなくなった。だから本当のことを言ってから死のうと思ったのが、書く動機になった。

記者:

外国メディアが世論に風穴を開けないと、誰も言えない状態だったのか。

森永卓郎氏:

そうだ。実はテレビというのは、報道と制作という二つの部門に分かれおり、互いに独立していることになっている。しかし、現実には独立していないのだ。もし報道部門がジャニーズ事件を追求したら、制作側で確実に高視聴率の取れるジャニーズのタレントを一切使えなくなってしまう。そのような利害関係があったため、報道は事実上動けなかった。これは後に検証番組で分かってきたことだ。

記者:

憲法で保障されている言論の自由が脅かされているのではないだろうか。日本は北朝鮮や中国共産党とは違うはずだ。

森永卓郎氏:

構造としては同じだ。全面的(な言論弾圧)ではないというだけ。さっき言ったこの3つのポイントだけは絶対ダメなのだ。言ってはダメだったということだ。

記者:

国民が『書いてはいけない』の内容を知ることにどのような意義があるのか。

森永卓郎氏:

実は、本の中で一番書きたかったのは日本航空123便の事件だ。これはもう39年前の事件だが、この事件に関して政府の事故調査委員会の報告書が明らかにおかしいというのは、当初からずっと言われてきたわけだ。しかし、声を上げると全部潰された。壁はジャニーズ問題よりもはるかに厚いものだった。話そうものなら、すぐ潰されるのだ。

ざっくり言えば、私は1985年の日航機事件について、日本がアメリカに借りを作ってしまったと考えている。そのことが事故から40日後のプラザ合意に結びつき、翌年の日米半導体協定にも結びついた。さらには日米構造協議、あるいは年次改革要望書等々にまで影響を及ぼすこととなった。1985年までは日本は独立国を目指していたのだが、今や完全な植民地になってしまった。その大転換の契機が、日本航空123便の事件というわけだ。

だから、今でも遅くない。40年前のあの夏の事件について、そろそろ本当のことを認めてはどうだろうか。そして、日米関係を対等なものに戻して、日本の主権を取り戻したほうがいいのではないだろうか。これが私の考え方だ。

記者:

日経平均株価はついにバブル期を超え、史上最高値を更新した。今後の日本経済の先行きはどのようになるのか。

森永卓郎氏:

アメリカも含めて、日本は令和恐慌に突入すると思う。現状としては、まだデフレが続いている中で、金融の引き締めに出ている。実は表にはあまり出ていないことだが、今はとてつもない財政の引き締めをしており、歴史上なかったぐらいの財政の引き締めをしているのだ。

例えば2020年度は、プライマリーバランス、基礎的財政収支の赤字は80兆円だった。それが今年度予算では8兆8千億円だった。10分の1に赤字を削減しているだけでなく、実は税収に関しては、前年度と比べてほとんど増えないという想定になっているのだが、普通に想定すれば、多分10兆円、20兆円増えるだろう。さらに基金に7兆5千億円のお金を流していて、実質的に今年度の財政黒字というのは、多分30兆円近いと思う。

一方で、IMFの統計を見ると、日本は実は借金を抱えながら山のような資産を持っていることがわかる。統合政府ベースで見ると、カナダに次いで世界で2番目に健全な財政を有しているのだ。借金もなければ、とてつもない財政黒字を出しているのに、国民負担をどんどん高めていくという財政緊縮をしているわけだ。金融と財政の同時緊縮をデフレの中で行うとどうなるかというと、1929年に浜口雄幸がやったことと同じになる。だから、私は日経平均は10分の1になっても、全く不思議ではないと思う。

記者:

日経平均株価は連日のように高値を更新しているにもかかわらず、希望退職を募る企業が出てきている。この現象はどう見るべきか。

森永康平氏:

これはアメリカでも確認できている現状で、株価を上げるためには利益を上げなければいけないという中で、どんどんAIなどで人間を置き換えて人件費を削っている。これはアメリカのテクノロジー企業などが昨年や一昨年からずっとやっていることだ。

そのため、株価をどれだけ上げるか、株主にどれだけ還元するかというところに経営者の意識が行ってしまい、退職した従業員の人生など知ったことではないというスタンスが日本にも浸透してきているのではないかと考える。

さらに、今の日本は労働環境を見ると非常に引き締まっている状況であり、退職者が次の職に就きやすい状況にある。そのため、経営者からするとそのような作戦・施策を取りやすい環境があるのではないかと私は分析する。

記者:

日本には昔から近江商人の「三方良し」のような商徳があった。そのような伝統が失われたため、今日のような状況に陥っているのだろうか。

森永康平氏:

明らかに周回遅れだと思う。アメリカがやってきたことを良いものとして、かっこいいものとして追いかけてきたのが、ここ30年、40年くらいの話だと思っている。この点においては、記者の認識の通りだ。

年上の人たちと話をしていると、日本がダメになってしまったけれども、希望はあるとみんなが言っている。何が希望かと言えば、今の若者が政治や経済でトップに立ち、世代交代が起こると日本は良くなると考えている年上の人が結構な数いる。

逆に20代、30代、40代の人と話す機会が多い私からすると、逆に希望を持てない。その理由は日本で支持されているビジネス系インフルエンサーを見ればわかるのだが、明確にアメリカっぽい人や、ネオリベっぽいやり方がかっこいいという発想を持つ人が非常に多い。そのような価値観が広がっているので、世代交代したら良くなるとは僕は思えない。むしろひどくなる可能性すらあると思う。

記者:

今後の日本経済がさらに成長するとともに、道徳性を取り戻すのは可能だとお考えか。

森永卓郎氏:

おそらく数年以内に令和恐慌になると思っている。昭和恐慌のとき、1930年代に何が起こったかというと、世界恐慌のときのアメリカと一緒で、4人に1人が失業者だった。若者の「大学は出たけれど」というのが当時の流行語になり、就職先などなかった。私は、今の資本主義がガタガタに崩壊すると思っている。特にお金を稼げている若者はみな、無一文になると思っている。そこで何が起こるかというと、私は大都市がみんなダメになる、特に東京がダメになると思っている。その中で地方ベースに、昔の日本が再び息づき始める。このような形でしか変われないというか、そう変わっていく可能性が一番高いだろうなと思う。

(つづく)

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