電力供給停止、事業者なら「可能」…中国の発電事業 日本に2%

2024/05/10 更新: 2024/05/11

8日の参議院決算委員会で、斎藤経産相は「再エネ発電事業者が意図的に発電設備の稼働を抑制・停止させること自体は可能だ」と述べた。中国による電力供給停止の危険性を質した柳ケ瀬裕文議員(日本維新の会)への答弁。

柳ケ瀬議員は、中国企業が日本国内の発電事業に関与している現状を指摘し、「出力を急減させることで供給系統全体を混乱・停止させるテロ行為を起こすことは可能か」と追及した。同大臣は電力融通指示や供給命令で安定供給を図る方針を示したものの、テロ行為に対する防衛策については明らかにしなかった。

太陽光パネルの主要生産国が中国であることなども含め、柳ケ瀬議員は再生可能エネルギー拡大に伴う対中依存リスクを強調。中国系事業者のシェア拡大は「安全保障上のリスク」との認識を示した。

日本における外国資本による発電事業投資は全部で1291件、そのうち中国(香港含む)が27件で、約2%となっている。

外国資本による発電事業投資は外為法で規制されているが、同議員は居住者なら届出が不要な点を規制の限界として指摘。全体像の把握と、外国資本規制の必要性を訴えた。

さらに、内閣府の再エネタスクフォースに関与した自然エネルギー財団が中国の「一帯一路」プロジェクトに加入していたことや、同財団が会議で使用した資料に中国国営企業のロゴが入っていた問題にも言及。「中国の目指す世界総電網構想を補完することを目的とした組織だ」と指摘し、国のエネルギー政策への関与を問題視した。

斎藤経産相は、日本がエネルギーの国際連携を一般論としてあらゆる議論・検証は行っているが、「自然エネルギー財団が提起していたアジア国際総電網構想を前提にした議論や検討を行った事実はない」と否定した。

4月の参議院行政監視委員会でも、太陽光発電施設における中国企業のリスクが取り沙汰された。青山繁晴議員(自民)は、複数の電気主任技術者からの内部告発として、日本の太陽光発電所の一部で中国の通信機器大手ファーウェイ製の機器が使用され、インターネットに接続されていると主張した。

青山議員は「ファーウェイ製のパソコンにソフトをインストールしないと起動できない」「多くの機器がインターネットに接続されているため、中国共産党や軍部による遠隔操作が可能な状態にある」と指摘。

米国から制裁を受けているファーウェイ製品の使用が、サイバー攻撃のリスクを高めると懸念を示した。これに対し政府は「現時点では把握していない」としつつ、「太陽光発電所の立入検査を集中的に行っていく」と答弁した。

太陽光発電モジュール(パネル)や風力発電タービンの世界シェアは7割から8割を中国が占め、再エネ関連産業は中国依存に繋がる恐れがある。にもかかわらず、政府はこれらの再エネ事業に莫大な投資を決めている。今後10年間で150兆円ものグリーントランスフォーメーション(GX、脱炭素社会に向けて再生可能なクリーンエネルギーに転換していく取り組みのこと)投資を官民で実現することを目指している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。