中国には「城管(都市管理役人)」という公的な組織がある。無許可での路上販売などの取り締まりを、主な任務としている。
しかし「城管」の実態はというと、町のゴロツキを雇って制服を着せたような連中で、非常に威圧的で暴力そのものである。
さらには職務にかこつけて、庶民が商売する売り物をごっそり奪い取っていく強盗まがいのことも平気でする。その横暴なふるまいから、市民の反感や恨みを買うことも多い。
「城管」は制服を着た暴力団
それでも、日々を生きていくための生業を欠かせない庶民は、たとえ「城管」による暴力の危険があったとしても、命がけで路上での商売を続けている。
下の映像は、城管が果物売りの女性をつかまえ、背負い籠のなかの果物を路上にぶちまける場面である。公務員というより、公権力を笠に着た暴力団と言うべきであろう。
こうした城管による「庶民いじめ」は枚挙に暇がない。天秤棒にわずかな野菜をかついで、街へ売りにきた90歳の農民のお婆さんが、城管に棒で殴られ、頭から血を流している動画もある。
日本では考えられないことだが、今の中国では、これが日常の光景になっているのだ。
(城管が果物売りの女性をつかまえ、背負い籠のなかの果物を路面にぶちまける場面。李沐陽氏のツイッターより)
「露天商の反撃」
今月15日、中国遼寧省瀋陽市で「露天商が城管に反撃する」事件が起きた。
この日、城管から暴力的に立ち退きを迫られ、仲間のおばあさんを傷つけた露天商のおじいさんが道端に転がっていたレンガを手につかみ、城管を殴りつけたのだ。
その時の様子を捉えた動画が華人圏のSNSで拡散され、コメント欄には「おじいさん、よくやった!」といった拍手喝采の声が多く寄せられている。
以下が動画の内容となる。
(「露天商が城管に反撃する」事件、2024年5月15日、中国遼寧省瀋陽市。)
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公園の道端と思われる場所で多くの露天商が出店するなか、数人の制服を着た城管が、おじいさんを力づくで追い払おうとしていた。城管の1人はおじいさんの手から何かを奪おうとしており、自分のモノを必死に守りながらおじいさんは「何をするんだ!」と、とても怒っている様子だった。
すると、おじいさんと一緒に露店を出していたおばあさんが駆け寄って何か話すと、おじいさんは「あんたら何やっているんだ、土匪(盗賊)め!」などと罵った。
しかし、城管は怒るおじいさんを相手にせず、おじいさんの露店の商品を道端へ次々と投げ捨てていく。店の商品を守ろうとしたおばあさんは、城管の1人によって引きずられるなどして地面に倒れ込んだ。
これを見たおじいさんは激昂し、道端に落ちていたレンガを拾い上げて城管の1人を目掛けて振り下ろした。突然の襲撃を食らったその城管は頭から血を流して地面に倒れ込み、おじいさんは他の城管たちによって地面に押し付けられたのだった。
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注目すべき点は、おじいさんが城管を攻撃した時、周りの市民はみな「(おじいさん)よくやった!」と拍手喝采を送っていたことだ。
この動画がSNSに投稿されると、コメント欄では現場の民衆と同じ反応が見られた。おじいさんへの拍手喝采の声が絶えなかった。
現地当局は15日、「おじいさんはルールを守らずに露店を何個も占拠したうえ、城管の『片付け』にも協力しなかった。さらにレンガで城管を殴り、複数か所の骨折を負わせた。おじいさんは警察に連行された」と発表した。
いっぽうで、「おじいさんが城管を殴った」件に関しては、「あれは間違いなく正当防衛だ」とおじいさんを擁護する世論の声も根強い。
「城管」もまた被害者
中国の城管は、チンピラや盗賊の代名詞にすらなっているほど、露天商でなくても市民から冷たい目で見られている。
城管のなかには、他人を尊重することなど知らず、人をいじめ、いたぶることを楽しんでいる者さえいる。
「城管」関連の投稿をしばしば転載するYouTubeなどで、中国関連の時事ニュースを報道する番組「新聞看点」の司会をする、時事評論家の李沐陽氏は次のようにコメントしている。
「中国の城管たちは哀れなものです。長年いじめられてきた民衆が限界に達し、ついに反撃に立ち上がる時、真っ先にターゲットにされるのはこの人たち(城管)でしょう」
「実際に、人々が本当に反抗する相手は中国共産党です。そのとき城管は、中共の具体的な化身(体現者)になってきたため民衆の攻撃の標的にされるのです。そう考えると、城管たちもある意味で、中共の体制下の犠牲者だと言えます」
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